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宇宙図書館/松任谷由実 [勝手にディスクレビュー]

久しぶりに、勝手にディスクレビュー。
新譜で買いましたユーミンの新作ですね。
まだあまり聞き込んでしまわないうちに、わりとファーストインプレッションに近いものを持ってるうちに書いておこうかな、って。

松任谷由実「宇宙図書館」
2016年11月3日発売
UPCH 29230
宇宙図書館.jpg

まず最初にね、「あ、ユーミン帰って来た」という感じ。
これはあくまでぼくがここ何年か聞いて来たうえでの感覚なんだけど。
ここ数枚のアルバム、それぞれ性格も違うし、好きな方もたくさんいるだろうし、
というのもわかった上であえて書くのだけど。

2009年の「そしてもう一度夢見るだろう」というアルバムが、ぼくには非常に聞きにくかったのね。
なんというか、ぼくにはあまり引っかかるところが無くて。
それまであった、言葉の中にあるユーミン独特の「あや」のようなものがどうも見つけにくい。
たしか、このアルバムの製作はご本人もかなり苦労をした、という話をしてたと思うんだけど、
それがものすごく音にも出てたなぁ、という感じがあって。
唯一『Judas Kiss』という曲だけ、そういう「妙」を感じられたんだけど。
その次の2011年の「Road Show」は、そういうところからふと抜け出したな、という、
落ち着きを取り戻した様な感覚もあって、前作よりは聞きやすかった。
好きな歌も多いし。
でも、中には「かなりがんばって作ってます。がんばって歌ってます」という曲も見えて。

その翌年に40周年を迎えてベスト盤「日本の恋と、ユーミンと。」を括るわけだよね。
きっとこれで、やはり無意識にか自分の活動を一度総括したんだろうな。
2013年の「POP CLASSICO」では、ひと括りした感覚をしっかり出した『シャンソン』と、新しい次の一歩です!という『Babies are popstars』が同居する様な作りで。
この時のライブは、40周年をまとめながら、それも1つの通過点ですよ、という流れを汲んでたように感じたんだよね。

そして、今回の『宇宙図書館』
ここ何枚かのアルバムに見え隠れしてた「みんなが想像するユーミンを探ってる」という感覚が非常に見えなくなってる。
感じたところでは、映画のために作った『残火』にその片鱗が少々見えるくらいで、
あとの曲は気負うのをやめて、無理せずに「今の感覚で歌を紡ぎました」という感じ。
そして、そういう歌たちが非常に聞きやすい。すーっと入ってくる。
そこには、決して「マンネリ」ということではなく、ユーミンが昔から出していたエッセンスが、ものすごく自然な感じでこぼれてる。
1曲めの『宇宙図書館』を聞いた時に、その聞いてる感覚が『悲しいほどお天気』(楽曲の方ね)を聞いている時の感覚と、ものすごく近いものを感じたのね。
いろんな人との関わりがあって、そして今自分がここにひとり存在している、という感覚。
そこから始まる12曲を聴き終えたときには、2002年のアルバム「Wings of Winter, Shades of Summer」を聞いた後に似てるな、という感覚があった。
あのアルバムは「近未来の精神的リゾート」を意識した、というアルバムだったけど、
つまり、このアルバムも「精神的に落ち着いた感覚」が強いんだろうな、と。
加えて、なんというか「生と死は隣り合わせだ」という感覚がどこかにあるような。
『ひこうき雲』みたいなあからさまなものではなく、今自分が生きているこの世界と、この世界を終えた人の記憶があって、いずれ自分の終わる世界が来る、という。
それをわかった人が歌っている、というのかな。わかりにくいけど。

楽曲を見て行くと、穏やかながらわりとバリエーションにも富んでいる。
はじまりの『宇宙図書館』と終わりの『GREY』という非常に穏やかな2曲で枠を作ってる中で、
激しめの『残火』、ハウス系打ち込みの『星になったふたり』、完全なジャズの『月までひとっ飛び』あたりがアクセント。
個人的には完全生バンドの曲よりも、淡々とした打ち込みの上で曲が進んで行くものの方がこのアルバムには似合ってる気がしてる。
アルバム幕開けの『宇宙図書館』、打ち込みのリズムの上で音数少なくゆるいグルーブがある『Sillage ~ シアージュ』、ジャズの『月までひとっ飛び』、ユーミンクラシックとも言える『私の心の中の地図』あたりがぼくのお気に入り。

なんか聞いててふと思ったんだけど、
ユーミンの数少ないアルバム未収録曲『風のスケッチ』なんか、このアルバムだとすんなりはまりそうな気がする。

ま、そんな感じで、今回のアルバムは多分繰り返し聞くアルバムになりそうです。
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