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トリのマーク を見納める [芝居]

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「これがわたしたちの名前です。発音はできません。どうぞ好きな呼び方で呼んでください」

という、マークが集団名になってる劇団というか、グループ。
<トリのマーク(通称)>と表記されることが多い。
ぼくは、以前柳澤さんとお話しした時に「トリ」と言ってたので、以来「トリ」と読んでる。

そんなトリの最終公演「ここから見えるのはきみの家」を見てきた。
25年で幕を閉じることにしたようだ。

思えば最初に見たのは大学時代。
演劇ぶっくにたびたび取り上げられてて気になってたところに、当時の彼女が「高校の同級生がえんぶに出てるの!」と見せてくれたのがトリ。
じゃ、今度見に行ってみよう、と見に行ったのが最初。
それからずっと。
主宰の山中さんと、看板女優の柳澤さん以外は役者さんもずいぶん入れ替わったけど、常にいい空気をまとってる方ばかりだった。
一時期は公演後にファンミーティング的なことをやったり、役者や作家としてのワークショップもやってて、勇んで参加させてもらったりして。
特に、脚本のワークショップのときはいろいろヒントをもらったなぁ。
そんな中で、今は照明担当として裏方に回ってる、当時は役者だった出月さんとはほんとに仲良くさせてもらって。
その頃の役者募集のオーディションに本気で応募しようかと思ったんだけど、先述の彼女から「出月さんはふたり要らないでしょう」と言われ。
その頃から参加してた櫻井くんも、若い役者という感じだったのが、今回の最終公演ではなくてはならない存在になってたなぁ。

ある時期、トリは東京飛び出して西の方へ行ったり、山の方に行ったり、東京でも下町の方と繋がりが深くなっていって、そして山中さんと柳澤さんのふたりは曳舟の商店街にあった古い薬局あとに「こぐま」という古民家カフェをオープンさせた。
オープン当初はこぐまでの公演や企画を打ったりもしてたんだけど、次第にトリの公演の周期は拡がっていって。
しばらく年1ペースでやってたのが、今回は3年空いて。
そして久しぶりの公演が「最終公演」であるとアナウンス。
最後の公演には看板女優だった柳澤さんは参加せず。
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それでも、トリはトリだった。
山中さんの世界はいつまでも変わらなくてうれしかった。
でも、見ながらどうしても昔のことを考えてしまう。
特に今までのことを総括するような記念公演的なものではなく、あくまでも「いつものトリの世界」なのだけど。
山中さんの作り出す世界には、だいたい決まったポジションに役割が振られてて。
そこに、その時々のちょうどいい役者さんがはまっていくのだ、と。
(ただ、出月さん的ポジションは次第にいなくなっていったなぁ。櫻井くんが少しずつそっちに動いてきた感じはあるけど。)
あんまり、そう言う見方をしてしまうのは、そこで演じてる役者さんに非常に失礼なことなので考えないようにはしていたのだけど、
どうしてもよぎってしまうのが「ああ、この人は柳澤さんのポジション担当か」とか、「あの時期ならこの人は丹保さんだな」などと考えてしまって。

12ヶ月連続公演とか、ギロンと探偵シリーズとか、さかなおとことか。
場合によっては1日だけ、1回だけの公演なんかもあったから、日が合わないと見られないこともよくあって、なんとか予定を調整したこともあったな。
見られないのがもったいなくて。
ほんと、見られる限り通ったよね。
あの時期は、作る側も大変だったけど、追う側も大変だった。
でも、それがなんというか、変な共有意識まで持っちゃったりして。
見る側もトリの世界に混ぜてもらう、というのか。
劇場でやってても、屋敷の一部屋でやってても、寺の座敷でやってても、
ギャラリーでやってても、店の一角でやってても、
トリの世界が始まるとそこはトリの世界と時間軸があった。
そこにふわっと風が吹いて、通り抜けて行った。

普通の会話のようでいて何かがちょっとずれていたり、
普通の感覚かと思って聞いていると時間軸がものすごく動いていたり。
時には言葉さえ捨てていたり。
そんなトリの世界が大好きでした。

個人的に一番印象に残っているのは2001年12月の公演「Nusrat with red pepper and garlic」
この時の、終わり間際の会話とふとした動きで、その芝居のすべてがすーっと1本につながって「うわぁ!そう言うことだったのか!!」という驚きがいうか、その感覚の気持ちよさが何とも忘れられず。
(あれが15年前なのか・・・)。

一度、ぼくの公演に山中さんが見に来てくださったことがあって。
どんな劇評をされるのかドキドキだったんだけど、「すごく良かったですよ」と言ってもらえてほんとにうれしかった。
まぁ、「ダメですね」とは言わないだろうけどね。

思えば、自分が役者として出る時に、頭のどこかで「役者としての」山中さんの、なんというか旅人感の様なものをほんのり意識してたのかもしれないな、
なんてことを、最後の公演を見ながらふと感じたりもした。


終演後に山中さんとご挨拶させてもらって。
「最終公演なんですねぇ・・・」と言うと、
「柳澤が引退しちゃったのでね。」というお答え。
オフィシャルな場で言ってはいないのでここに書いてしまうのはどうかとも思いつつ、終演後のお話の中で隠さずに話してることなので、まあ書き留めておいてもよいかな。だめならあとで消します。

つまり、看板役者であった柳澤さんが、そろそろ公演のための時間を作ることや公演自体に関しての体力がきつくなって来た、ということで。
そこで「引退します」と、今回も稽古などにも一切顔を出さなかったと。
山中さんとしては、柳澤さんがいなくなることで「トリのマーク」という看板は一度おろそう、と。
柳澤さん自身は、存続しても「別にいいよ」というスタンスだったようだが、山中さんとしては、やはり区切りを付けたかったようだ。
それが、25周年目にして最終公演とした理由。

ということは、山中さん自身はまだ芝居を作ってくださるのかな?
「まだ何も決めてはいないですけどね。」
「とりあえず、トリは終了することにしました」と。

トリがなくなったのは残念なことだけど、
山中さんの作り出す世界は、違う形でそのうちひょっこり現れるかもしれない。

それを待ちながら、また久しぶりに「こぐま」を訪問しようと思う。
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