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kaleidoscope/Mio with Friends [勝手にディスクレビュー]

さて、まだどこにもきちんと情報を出せてないので、
こちらに載せておきますね。

Kaleidscope.jpg
Mio with Friends 「kaliedoscope」
MWFR-0001
2022年12月26日発売 3,300円

1. 幸せ日和 (曲:向井謙一郎)
2. One Summer Love (曲:原田賢扶)
3. Horizon (曲:向井謙一郎)
4. Be strong 〜鮮やかに〜 (曲:石川洋)
5. 心咲かせて (曲:原田賢扶)
6. 新しい私 (曲:中田征毅)
7. 粉雪の願い (曲:石川洋)
8. Love me !! (曲:杉山ユカリ)
9. きかせて (曲:中田征毅)
10. 僕の翼 (曲:向井謙一郎)

全作詞:Mio

Mio with Friends:
 Vocal : Mio
 Guitar : 向井謙一郎
 Bass : 原田賢扶
 Drums : 石川洋
 Keyboards : 中田征毅

 Violin:小夜子

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2018年から月イチでライブを進めてきてる中で、
2021年の初め頃から、「このメンバーでオリジナル曲を作ってみよう」ということになり、
1年かけて6曲をライブで発表してきて。
そこで、「これを元に、アルバムを作ってみよう!」ということで、
メンバーそれぞれがもう1曲ずつ書き下ろし、レコーディング。
アルバム製作のためにクラウドファンディングを立ち上げて支援をしてもらいながら、
秋までにアルバムを完成、年末にお披露目、となった次第。

ということで、どんな曲が入ってるのか、ライナーノートです。

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『幸せ日和』
ギター:ムーチョ作曲のこの曲は、もともとこの流れとは違うところで、
"Mio&Mucho"のステージでオリジナル曲として作られたもの。
いずれはバンドでもできればね、と思ってたという曲は、早いうちからレパートリーに。
軽快なポップスで、アルバムのオープニングを飾ってます。
レコーディングに際して、Violinの小夜子ちゃんが「ひとりストリングスセクション」を、
自らのアレンジでゴージャスに彩ってくれてます。

『One Summer Love』
「オリジナル曲を作ろう!」という号令から先陣切って届けられた、
ベース:原田くん作曲の、達郎さんリスペクトなシティポップス。
歌詞にも、アレンジにも、コーラスにもこだわりまくりの愛が注がれてます。

『Horizon』
アルバムのための新曲として作られた、ムーチョ作曲による、少しアンビエントな洋楽的ポップス。
浮遊感漂う中に、何層にも重ねられたコーラスは、どこか懐かしい匂いもします。

『Be strong 〜鮮やかに〜』
ドラム:いっしーによる作曲で、少し憂いも持った抒情的ロック。
60-70年代のアメリカンロックの匂いもあるかな?
「このメロディにはかっこいい言葉を載せなくては」とMioちゃんも気合が入ったとか。

『心咲かせて』
今回の1番の問題作、と言われてる原田くん作曲の歌謡曲、というよりもはや演歌。
アルバムのための新曲としてデモが送られてきた時に、メンバー全員が戸惑った1曲。
で、もう開き直ってみんなが作った結果、わりといい感じに仕上がったのもおもしろいところ。
Mioちゃんは惜しげもなく「悩みなき人生」などの言葉を乗せてます。

『新しい私』
ぼく=まさぼうの作曲による、ちょいソウル目な小洒落たポップス。
オリジナル曲を作っていく流れで、最後の担当になったので"すきま"をねらった、というか。
横揺れの曲があってもいいな、という思いから。
弾く側も、聴く側も、たぶん気持ち良いグルーヴに身を任せられる曲、になってます。

『粉雪の願い』
アルバムのための新曲として、いっしーが書いてきた曲。キーワードは「ラテン」と「転調」。
ラテンの熱いビートに乗せて、歌われるのは冬の情景、というマッチング。
途中に入ってくるドラムソロも聴きどころのひとつ。

『Love me !!』
前任キーボードでもあるユカリさんによる、ギラギラのディスコサウンド。
最初に聴いた時から「振り付けで踊りたい!」とMioちゃんが思ったという曲は、
音の質感もバブル真っ盛りなイメージで。

『きかせて』
今作唯一のバラード曲、という感じかな?(そんなにバラード意識もないんだけど)。
ぼくの作曲によるもので、今回のための新曲。
ぼくにしてはめずらしく、かなりマイナーキー強めな曲になってて、
イントロからエンディングに向かって大きく広がっていくような、
ちょっとドラマチックな仕立てになってます。
この数年を経て、の歌詞も、今だからこそ。

『僕の翼』
アルバムの締めはムーチョ作曲の、ちょっと"みんなの歌"にも合いそうな、開放感のあるポップス。
ある童話を下敷きにした、というMioちゃんの歌詞もあいまって、
ほんとに空に広がっていくかのようなスケールの大きさもあって。
最後にメンバー全員でコーラスが入るところから「この曲がアルバムの締めだね」と、
なかば満場一致でこの位置におかれました。

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全10曲。
どの曲も個性が違ってるので、
きっと聴いた人それぞれが「この曲が好きだ」という1曲が見つかると思う。
そして、たぶんそれがどれか1曲に偏らない、そんな10曲の集まり。
「万華鏡」という意味のタイトルも、うまくアルバムを表せてると思う。

このアルバム、
現時点ではメンバーそれぞれの手売りでしか販売できてないのだけど、
年が明けたら流通に乗せられるように、話はすすめます。
それまでに「アルバム、聴いてみたいです!」と言う方は、
どうぞそれぞれのメンバーに直接おたずねください。
もちろん、ぼくの方に連絡いただければおわけできますので。

いいアルバムが作れた、とメンバー一同自信を持ってお届けできます。
ぜひ、聴いてください。
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drawing/キタムラナオコ [勝手にディスクレビュー]

久しぶりのディスクレビュー。
まあ、ある意味”身内”とも言える、キタムラナオコの新譜のご紹介です。

web用表紙絵.jpeg
キタムラナオコ 「drawing」
2021年2月12日発売

1. Space and I
2. ビールと君 (deeppink #ff1493)
3. #00ffff
4. ぽつねん
5. So Far Away

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今回のアルバム製作のいきさつについては、その発端となった坪井洋くんのラジオ番組に、ナオさんが出演したときに話をしてるので、お時間あればそちらを聞いてみてください
お時間ない方のために軽く説明すると、
レーベルを立ち上げてる坪井くんが知り合い筋からキタムラナオコの歌を聞き、
「アルバムを作りませんか?」とアプローチ。
そしてナオさん、試行錯誤を繰り返していたオリジナル曲の製作をがんばり、
3曲形にして、ライブでやりながら形を整え、録音にのぞんだ、という。
ちなみに一昨年12月のナオさんとぼくとのライブにおいて、
彼女の作詞作曲による楽曲は、すべてぼく一度弾いております。
(お、なんかこいつアピールしてるぞ!)

今回の録音では、新進気鋭のジャズピアニスト、高橋佑成くんを迎えてのデュオをメインに。
1曲だけ、ドラマーとして坪井くんも参加してるという、シンプルな編成。
2年くらい前に、このトリオでやったライブを聞きに行ったことがあるのだけど、
ゆうせい君のピアノは実に絶妙で、彼女の声にもよくあった音使いをされてて好印象。
おまけにぼくの大学の後輩でもあることがわかったりもして。(相当年下になるけど)。
それもあって、アルバムではどんな音になるんだろう、と楽しみにしてた。

——
まず単純に、いいアルバムだなぁ、と思った。
どの曲も、絵と匂いを感じられる。
ちゃんと「歌」を歌ってきた人の音楽。
表面上、歌ってるように”なぞってる”人とは違う、という意味で。
そういう人が作った楽曲、を、きちんと歌ってる。
そういう丁寧さが、聞いたときの心地よさと、
なんというか”この人の真髄に触れてしまってるんじゃないか”という生々しさを感じた。
いつもの歌声を、変に加工することもなく、あの声のままちゃんと届いてきたことに安心。

ゆうせい君のピアノもほんとに心地よい。
もちろん「おれだったらこう弾くなぁ」という、対表現者としての違いはあるけど、
無駄に弾きすぎない、過度な主張はしないけどしっかり色は出す、
っていう、いい支え方をしてる。歌の。

当然のことながら、嫉妬はします。
おれのピアノでこういうものを作れればよかったな、っていう。
(それを思った自分、というのも面白い発見ではあったけどね)。

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『Space and I』は、彼女が数年来思いを寄せている”宇宙開発事業”を見つめて。
最初にできて、いろんなところで演奏してた『ビールと君』は、
アップテンポの陽気な雰囲気ながら、実は友人との別れを見てるもの。
元のタイトル『#33ebff』から色味変更した『#00ffff』は、
訪問者として与論の光景を見たもの。
これらが「自分が見て聞いて感じたことだけを自分の歌にすることにした」という彼女の歌。
多分それだけに、先述の「生々しさ」みたいなものに、触れているような気になるんだろうな。

ゆうせい君の情緒のあるピアノ曲に彼女が言葉を乗せた『ぽつねん』も、
多分その音から彼女が見た世界。

アルバムの終わりには、彼女が人前で歌うようになってからずっと歌い続けてる、
Carole Kingの『So Far Away』のカバーを、ゆうせい君のアレンジで。

ちなみにこのジャケットは、こちらの美容室のHPを見て、「私の顔を描いてください」と髪を切りに行って頼んだそうだ。どんな絵になるかは「すべて任せます」と。そしてこの絵が仕上がってきたのだ、と。
壁に飾ってみたくなるジャケット。
というか、そんな風に飾っておきたくなる音楽、だな。このアルバム。

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今までもずっと「曲は作ろうと思ってて、欠片はたくさんあるんです。それがまとまらない。」
と言ってたナオさん。
多作でなくてもかまわないので、どうぞこの先も曲を作り続けてくださいませ。

で、そのうちぼくとも音源作ってください。

とりあえず、事態が落ち着いたら『#00ffff』聞いてもらうために、
与論ライブツアー、行きましょう。
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20年越しの発売 ーKAITA「KIND OF LOVE」ー [勝手にディスクレビュー]

なんと感慨深い。
KAITAのニューアルバムが発売されたとは、なんとも。
ぼくの人生において最重要バンドであるKAITA。
(どう重要なのかはこちらから。)

今回発売されたアルバム「KIND OF LOVE」は、実は1999年のもの。
この時、業界内外に配布する形で作られた「KAITA DEMO ’99」という音源が、
20年を経て正式なアルバムとして今回発売されたもの。
なぜ今発売になったのか、それはよくわからないけど。
(そのうち聞いてみよう。)

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KAITA 「KIND OF LOVE」
2019年4月24日発売
MZK0002

1. 味のない果実
2. 明日になれば…
3. THAT I'LL BE LOVIN' YOU ALWAYS
4. LUCY
5. はなればなれの太陽
6. 寝言
7. BIRD

KAITA are
能勢海太 : Vocal
目木とーる : Guitar
多東康孝 : Keyboard
石田太一 : Bass
山田智之 : Percussion
高林勝美 : Drums

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この前年1998年に、ライブのセットリスト9曲中4曲も未発表の新曲が並んだ時があって。
それがここに収録された『味のない果実』『明日になれば…』『はなればなれの太陽』、そしてその後シングルとして発売された『さびしい夜の眠り方』

そしてこの年の年末のライブにおいて、すでにファンサイトでメンバーと交流を持ってたファン(おれ含む)に、メンバーから「打ち上げ来る?」と誘いがあり、その席でメンバーの目木さんが「デモ出来たら送るよ」と約束。
その後、本当にMDが送られてきてね。「周りの人にも聞かせてね」ということで。
この7曲入りのMD、ぼくにとっては完全に「KAITAのニューアルバム」だった。
どれだけ聞いたか。いや、今でもよく聞く。

イントロなしで、訥々と語るように始まる『味のない果実』は、トーンも抑えめの重めなロック。
1曲通してどんよりと虚無感の中に漂うような、でもそれだけでもないっていう歌。

キラーチューンである『明日になれば…』は初披露以来、この時期のライブには欠かせない定番曲になった。
実はこの時期、この曲にタイアップがつくかもしれないということで、そうなったらシングル発売をする準備があったそうだ。残念ながら話が流れてしまったらしい。
これ、シングルで発売されてたらどうなってたんだろうなぁ。

『THAT I'LL BE LOVIN' YOU ALWAYS』は、この7曲中でもっともわかりやすいKAITA王道ポップな1曲。「関係代名詞を使ってみました」というタイトルは、ちょっと難しいことをしてみたかったらしい。

『LUCY』もとびきりポップな1曲。モータウン的、とも言えるかな。カラッとしてるけど別れの歌。実はこの時期に離れることになった事務所の社長へのお別れメッセージ、というのは裏話。

『はなればなれの太陽』は出だしからハイトーンのシャウトが炸裂する重めのロック。後半海太さんひたすらシャウト。

『寝言』は静かに語りのように進んでいく、言ってしまえばプロポーズソング。
この曲だけは今までライブでは演奏されてないんじゃないかな。(やったかな?)

『BIRD』も、98年末のライブで初登場して以来、必ず歌われてたスケールの大きなバラード曲。
そういえばこの頃、ライブで「完膚なきまでにフラレた」と言ってたのだけど、そんなあたりが影響した歌なのかな、という失恋ソング。しかし名曲。

7曲通して、KAITAの特徴の1つでもあったファンク/ソウルの部分は影を潜めてるかな。
でも、その分全体的にもまとまってて、「デモ」としてまとめてるけどしっかりアルバムにもなってる。

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実はこの収録曲のうち、『LUCY』『BIRD』の2曲は後になって、TATOOさんプロデュースで真琴つばささんの歌としてリリースされてる。
(『LUCY』は少しだけ歌詞を変更して『SEE YOU AGAIN』というタイトルになってる。)
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あらためて聞いてみても、海太さんのボーカルの突き抜ける気持ち良さがハンパない。
そして詞曲はもちろん、演奏もアレンジもほんとにしっかりしてる(当然だ)。
つくづく、このバンドが稼働してないことがもったいなくてしょうがない。

KAITAはこの後「KAITA」としての活動を止めて、ファンクに的を絞った「LOVE BELL BACK LINE」というバンドにシフトチェンジ。
コンピ盤に参加したり、TV「ソングライトSHOW」なんかに出たりもしてたけど2001年3月にはLBBLも休止。
その後はメンバーそれぞれ個別に活動中。
いちばん目にするのはキーボードのTATOOさんかな?プロデューサー/アレンジャーとして各所で大活躍。
特にここ数年は石井竜也さんのソロワークには欠かせない存在になってる。
ギターの目木さんとパーカッションの山田さんは、TATOOさんのプロデュースワークにもよく駆り出されてるほか、それぞれがライブの活動で大忙し。
特に山田さんは「ほぼ日」関連にたびたび「バリスタパーカッション」として登場して、コーヒー好きが高じて「ヤマダのコーヒー」って豆屋さんも始めちゃった。
ベースの太一さんはKAITA活動後期から家庭の事情で福岡へ移住、地元アイドルのプロデュースなんかもしてる様子。
ドラムの高林さんも、一時期ほどではないながらもドラム叩かれてるとのこと。

そしてすばらしい楽曲をこれだけ書いて、こんなに人を唸らせる声を持つボーカルの海太さんは現在、クロサワ楽器総本店のギター担当責任者。
こんなところに出てきて喋ったりもしてるけど、そのしゃべり方が「ああ、海太さんだなぁ」とうれしくなってしまう。

アルバム発売記念とかでライブやってくれないかなぁ。ライブ見たいなぁ、まじで。
ついでに言うと、LBBLの頃の楽曲、今の形でいいから録音して出してくれないかなぁ。
『FLASH』とか『Another World』とか『黒い爪』とか。

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ところで今回のこのアルバム、こちらの販売元サイトから購入するとなんと!
海太さんによる新曲CD-Rが特典でついてくるとのこと!!!

CDが届いた今日それを知って、慌ててポチッとしましたおれ。
だって聞きたいもん、新曲。
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ついでに。
当時入手したKAITAとっておき音源あれこれ。
「97春シングル候補曲」ってやつはきれいな音で欲しいんだけどねー。
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宇宙図書館/松任谷由実 [勝手にディスクレビュー]

久しぶりに、勝手にディスクレビュー。
新譜で買いましたユーミンの新作ですね。
まだあまり聞き込んでしまわないうちに、わりとファーストインプレッションに近いものを持ってるうちに書いておこうかな、って。

松任谷由実「宇宙図書館」
2016年11月3日発売
UPCH 29230
宇宙図書館.jpg

まず最初にね、「あ、ユーミン帰って来た」という感じ。
これはあくまでぼくがここ何年か聞いて来たうえでの感覚なんだけど。
ここ数枚のアルバム、それぞれ性格も違うし、好きな方もたくさんいるだろうし、
というのもわかった上であえて書くのだけど。

2009年の「そしてもう一度夢見るだろう」というアルバムが、ぼくには非常に聞きにくかったのね。
なんというか、ぼくにはあまり引っかかるところが無くて。
それまであった、言葉の中にあるユーミン独特の「あや」のようなものがどうも見つけにくい。
たしか、このアルバムの製作はご本人もかなり苦労をした、という話をしてたと思うんだけど、
それがものすごく音にも出てたなぁ、という感じがあって。
唯一『Judas Kiss』という曲だけ、そういう「妙」を感じられたんだけど。
その次の2011年の「Road Show」は、そういうところからふと抜け出したな、という、
落ち着きを取り戻した様な感覚もあって、前作よりは聞きやすかった。
好きな歌も多いし。
でも、中には「かなりがんばって作ってます。がんばって歌ってます」という曲も見えて。

その翌年に40周年を迎えてベスト盤「日本の恋と、ユーミンと。」を括るわけだよね。
きっとこれで、やはり無意識にか自分の活動を一度総括したんだろうな。
2013年の「POP CLASSICO」では、ひと括りした感覚をしっかり出した『シャンソン』と、新しい次の一歩です!という『Babies are popstars』が同居する様な作りで。
この時のライブは、40周年をまとめながら、それも1つの通過点ですよ、という流れを汲んでたように感じたんだよね。

そして、今回の『宇宙図書館』
ここ何枚かのアルバムに見え隠れしてた「みんなが想像するユーミンを探ってる」という感覚が非常に見えなくなってる。
感じたところでは、映画のために作った『残火』にその片鱗が少々見えるくらいで、
あとの曲は気負うのをやめて、無理せずに「今の感覚で歌を紡ぎました」という感じ。
そして、そういう歌たちが非常に聞きやすい。すーっと入ってくる。
そこには、決して「マンネリ」ということではなく、ユーミンが昔から出していたエッセンスが、ものすごく自然な感じでこぼれてる。
1曲めの『宇宙図書館』を聞いた時に、その聞いてる感覚が『悲しいほどお天気』(楽曲の方ね)を聞いている時の感覚と、ものすごく近いものを感じたのね。
いろんな人との関わりがあって、そして今自分がここにひとり存在している、という感覚。
そこから始まる12曲を聴き終えたときには、2002年のアルバム「Wings of Winter, Shades of Summer」を聞いた後に似てるな、という感覚があった。
あのアルバムは「近未来の精神的リゾート」を意識した、というアルバムだったけど、
つまり、このアルバムも「精神的に落ち着いた感覚」が強いんだろうな、と。
加えて、なんというか「生と死は隣り合わせだ」という感覚がどこかにあるような。
『ひこうき雲』みたいなあからさまなものではなく、今自分が生きているこの世界と、この世界を終えた人の記憶があって、いずれ自分の終わる世界が来る、という。
それをわかった人が歌っている、というのかな。わかりにくいけど。

楽曲を見て行くと、穏やかながらわりとバリエーションにも富んでいる。
はじまりの『宇宙図書館』と終わりの『GREY』という非常に穏やかな2曲で枠を作ってる中で、
激しめの『残火』、ハウス系打ち込みの『星になったふたり』、完全なジャズの『月までひとっ飛び』あたりがアクセント。
個人的には完全生バンドの曲よりも、淡々とした打ち込みの上で曲が進んで行くものの方がこのアルバムには似合ってる気がしてる。
アルバム幕開けの『宇宙図書館』、打ち込みのリズムの上で音数少なくゆるいグルーブがある『Sillage ~ シアージュ』、ジャズの『月までひとっ飛び』、ユーミンクラシックとも言える『私の心の中の地図』あたりがぼくのお気に入り。

なんか聞いててふと思ったんだけど、
ユーミンの数少ないアルバム未収録曲『風のスケッチ』なんか、このアルバムだとすんなりはまりそうな気がする。

ま、そんな感じで、今回のアルバムは多分繰り返し聞くアルバムになりそうです。

DEBUT AGAIN/大滝詠一 [勝手にディスクレビュー]

久しぶりのディスクレビュー。
今回は新譜で。

大滝詠一「DEBUT AGAIN」
2016年3月21日発売
SRCL 8714-5
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このアルバムを聞くのに、聞く人それぞれいろんな思いがあるんだろうなぁ。

これを書くのは、あえて「1度だけ」聞いた状態で。しかもステレオで。
2,3度と聞いていくうちに、きっと聞き方も変わってくるからね。

まずこのアルバム。
これはあくまでも「蔵出し音源集」であって、大滝さんが作ったアルバムではない。
というこの当たり前のことを、感じずにはいられないのね。
それぞれの曲の録音時期、録音スタイル、目的なんかが違うので、
「蔵出し音源集」として聞くなら楽しいのだけど、「アルバム」としては質感がちぐはぐになっちゃう。
それと、大滝さんは「自分に楽曲を頼まれる、ということは、こういうことを求めてるんだな。」
ということをわかった上で提供してたんだな、というのも強く感じるところで。
どの曲もよく知ってる曲だけど、「アルバム」としてはメロディのトーンが偏りすぎてるんだよね。
そう言う部分で、あくまでこれは「蔵出し音源集」なんだな、と。

それはそれとして。

男性への提供曲は、見事なまでに「自分の曲ですが」って顔してるよね。
特に1曲目に『熱き心に』を持って来たのは大正解だと思う。
小林旭を想定して書いて、半ばそこに似せるようにも歌ってるけど、
『バチェラー・ガール』あたりとカップリングでシングルになっててもおかしくない感じ。
アルバムの入口で「そうか、このアルバムはそういうことなんだね」と思わされるし。

RATS & STARに書いた2曲がアルバムでは一番興味を惹かれたかな。
『星空のサーカス』って曲が、このアルバムで唯一知らない曲だったんだけど、
これはもう「GO! GO! NIAGARA」あたりから大得意にしてる「1人ドゥワップ」じゃないですか。
RATS & STARのコーラスワークを考えてのプロデュースワークだったんだろうけど、
これほんと、リリース目的なしに自分で録音してたのって、趣味なんだろうなぁ。
多分、世間的な知名度からしたら『星空のサーカス』って1曲だけ別枠なんだろうけど、
これはきっと、このくらいの振り幅が無いとそれこそ「アルバムとしての偏り」が強すぎちゃったから、ということでのこの選曲だったんだろうなぁ。
『Tシャツに口紅』は、こうして聞くと、大滝さんの系譜に沿ってはいるんだけど、
本人の曲では、この手の曲は作ってなかったのか、って。あったのかな?
近いところはかすっていながら、やっぱりこれに匹敵する曲って、出てこない。
そう言う面白さがあるね。

『風立ちぬ』はネットにも流れてるライブ音源だったので、それが「きれいな音で聞ける」という、
そこがポイントかな。
薬師丸さんに書いた『探偵物語』『すこしだけ やさしく』の2曲もライブの音源があがってたりして、
そのための録音だということなので、ある程度予測通り。
『探偵物語』は、以前勝手な想像で「大滝さんデモテープ」と題してカラオケでマネしたりしたんだけど、その本物が聞けた、って感じね。おおよそ外れてもいない。

一番意外だったのは『うれしい予感』だよね。
満里奈ちゃん版のカラオケを使ってるのでキーがものすごく低くなってる。
自分のためにやるとか、のちのちリリースを考えるならこのキーのままにはしないはずだもんね。
だから、これはほんとにプライベートな目的というだけだったんだろうな。
ま、これキーを適正に持って行ったらそのまま『君は天然色』になりそうだけど。

あとは、Disc-2の方の『針切じいさんのロケン・ロール』は楽しかっただろうなぁ。
提供曲でこれだけ弾けられるのは少なかっただろうからね。
あ、これは提供曲、ではないのか。プロデュースワークというところ。
ロンバケ以降、この手は自分の曲で出してこなかったから、久しぶりに遊んだぞ、て感じで。

音楽家としての楽しみは、Disc-2の最初の3曲に集約されてる気がする。
これは仕事云々から離れたところで、とにかく自分が楽しみたい、とばかりにセッションしてたんだろう、って言うのが見えるね。

――
こういうものに「続編」を期待しちゃいけないだろうし、今後発掘されるかもわからないけど、
『風立ちぬ』のスタジオデモとかもあるだろうし、何より聞いてみたいのは、
『いちご畑でつかまえて』の、「男声キーで作っちゃったメロディ」という元々最初に作った物を聞いてみたいよね。

ということで、あくまで「1回だけ聞いたところで」の感想。
ヘッドホンして聞いたり、別の環境で聞いたり、
3回聞く頃にはいろいろと聞こえてくるものも違うだろうし、
なにしろ、何度も何度も聞くだろうし。
そのうちに、「アルバム」として聞き馴染んでくるんだろうな。

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と、あえて1度だけ聞いた時点で書きました。
現時点では既に5回は聞いてます。
で大滝さん歌唱で『快盗ルビィ』の「キッスオブファイアーー」とか口ずさんじゃって。
どんどん体にしみ込んでくる。

風街であひませう/松本隆作詞活動45周年トリビュート [勝手にディスクレビュー]

久しぶりに、勝手にディスクレビュー。
最近買って、1週間ひたすらこればっかり聞いてた、ってくらいのアルバムをね。
私見を交えてご紹介。

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松本隆作詞活動45周年トリビュート 「風街であひませう」
2015年6月24日発売
VIZL-842

松本隆作詞曲のカバー曲からなる「風街でうたう」と、詞そのものを朗読するという「朗読カバー」からなる「風街でよむ」という2枚組。

以前、はっぴいえんどのトリビュートアルバム「HAPPY END PARADE」というものが作られた時にも感じたんだけど、松本隆の歌詞に対しては、みんな生半可なリスペクトじゃないものを作り出してくるよなぁ、というのがまず最初に出てくる感想。

この人がやったらこうなるよね、というのがわりとわかりやすく見えたのは、手島葵の『風の谷のナウシカ』
やくしまるえつこの『はいからはくち』も、きっとこういう風になるだろうな、という方向で存分に遊んでる感じ。
ハナレグミの永積くんの声で歌われると『Tシャツに口紅』もまろやかに響く感じ。
意外にも"正統派カバー"だったクラムボンの『星間飛行』は、ライナーノートを見て納得。
逆に思い切り原曲から離れてルードにジャジーに迫った斉藤和義の『白いパラソル』も面白いアプローチ。

中納良恵の『探偵物語』は悪くないんだけど、ちょっとコードアレンジにこりすぎちゃったかな、というのが引っかかる部分。悪くないんだけどね。
andymori小山田くんの『SWEET MEMORIES』も悪くないけど、この曲はもう日本のポップスのスタンダードになっちゃってるからね。加えて、ご本人のオリジナルのアレンジが出来上がりすぎてるからな。今からカバーするのは難しい。

で、非常に期待してたのが、セルフカバーになるスピッツ草野くんの『水中メガネ』
これはもう「なんて名曲なんだろう」って、あらためて思わされる1曲に仕上がってる。
まあ、あのメロディをあの声で歌われたらもうスピッツなんだけど。でも名曲。

今回の収録曲とカバーアーティストが発表された時点で、一番ぶっ飛んで「それは反則だろう!」と思ったのが安藤裕子の『ないものねだりのI Want You』
その組み合わせ自体がもう「絶対化学反応起こす!」というのが見えてたし、そしてそれがよくない方向に転がるはずがないことはわかったたし。
で、聞いてみて、やはりこの曲は今回のキラーコンテンツの1つであるのは間違いなかったな。

そして、今回聞いてみて一番反則だったのはYUKIちゃんの『卒業』
いきなりあの声でサビをアカペラで歌い始める、と言う時点で反則。
ライナーノートにあったように、さらっと歌ってるのが本当によくて。
それが逆に主人公の本音を隠しながら引き出してる、とでもいうのか。
これはほんとに、やられたな。

そして。
ある意味今回の目玉なのは細野さん名義の『驟雨の街』
まぎれもなくはっぴいえんどの新曲ですよ、これ。
何がはっぴいえんどなのかって、松本隆のドラムね。
このドラムの音がはっぴいえんどなんだ、って気がついた。
大滝さんはいないけど、このドラムの音と細野さんの声で、十分そうなる。

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ここまででずいぶん書いたな。

「風街でよむ」の方も、かなり興味深い内容でね。
一通り聞いた後に、「自分ならこう読んでみたい」と、いろいろ試してみたくなるそんな1枚。

わりと最近の役者さんが多く選ばれてるんだけど、ちょっとね、多くのものが
「陰鬱な感じの一人語り」になっちゃってるのがもったいなかったなぁ、と思って。
抑えたトーンで息を殺すように読んでるものが多くて。
ただ、もちろんその読み方が正解だというものもあるんだけど。
東出昌大の『言葉』は、もう引き返せないというドキドキする感じが裏に見え隠れしててよかったな。
若手の役者さんの読んだ中で絶品だったのは、広瀬すずの『初戀』が抜きん出てる。
これ、ほんとに絶賛の評しか出てない感じなんだけど、でもそうなんだからそうなるよな。
とにかくもう、詞の内容の瑞々しさを余すところなく"表現"してくれててキュンとする。

一方、松本隆の詞を歌って来た歌い手たちはその表現の仕方をよく知ってるんだな、
という印象が強くてね。
キョンキョンが読んだ聖子ちゃんの『哀しみのボート』は、やっぱりオトナでなければ表現しきれない部分をすてきに汲んでるし。
自身の曲の新しい解釈を見せた薬師丸さんの『あなたを・もっと・知りたくて』は最後にはっとさせられる。
完全に一人芝居になってるのが、太田裕美が読んだ『外は白い雪の夜』
こればかりは、話に耳を傾けちゃう感覚で、話が進むに連れて涙が出そうだった。

1つ意外だったのは、斉藤由貴が自ら読んだ『卒業』
きっと"女優の斉藤さんはこう読むだろう"といううっすらとした予測があったんだけど、違った。
この人にとって、この詞はもう歌手としての自身の一部なんだろうな。
読んでるんだけど、歌ってるんだよね。完全に。
いわゆる「詩の朗読」ではもはやない。
言葉を読んでるんだけど、歌ってる。
それが証拠に、トラックの長さが歌の長さとそれほど変わらない。
他の人は2分程度、長い詞なら3分くらいだったりするんだけど、
これはしっかり4分半ほど。
ちょっと不思議な感覚だね。

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というわけで、
今日みたいなすごい雨が降ってると思わず「街は驟雨〜通りは川〜」と口ずさんでしまう今日この頃。

そうそう。
これだけすごいプロジェクトなのに、松本隆に取っても相当重要な人物とも言える松田聖子が
今回一切絡んでない。
冊子にコメントもない。

これは、もしかしたら裏で何かすごいことが待ってるんじゃないか?
と勝手に勘ぐってたら、うれしすぎるビンゴ!
秋に発売される聖子ちゃんの新曲が、詞:松本隆/曲:ユーミン/アレンジ:正隆さんだというではないか!

もう、どんな名曲が上がってくるのか、楽しみすぎる。
そして、ぼくの夢の1つである「松本隆の詞に、ぼくがメロディを作って、聖子ちゃんが歌ってくれる」というそれも、がんばればあり得なくもないかもしれない、と心の奥底で静かに情熱を燃やすわけです。

『左うでの夢』リマスター盤に関して [勝手にディスクレビュー]

今回はちょっと雑談的に。

坂本龍一のMIDIレーベルでのリマスターも進んでるようで、先月「左うでの夢」と、その派生産物の「THE ARRANGEMENT」がリマスターで再発。
「左うでの夢」の方は、作業の中で見つかった全編のインストバージョンも付属しての2枚組。

実は坂本龍一初期の「B-2 UNIT」と「左うでの夢」ってあんまり聞かないアルバムでね。
実験色が強すぎるというか。坂本龍一の"ハーモニー"的な要素が好きなものでして、この2枚はわりとそういう部分から離れたことをしてみようとしてるアルバムなのでね。

とはいえ、まあ気になるので聞いてみたのだが。
実際、リマスタリング自体はそれほど大きな驚きがあるような感じでもなかったかな。
(ちなみにぼくが今まで持ってたものはオランダ盤の、「THE ARRANGEMENT」が追加収録されてるやつ。)
ただ、そんな中で『かちゃくちゃねえ』の音の立ち上がり感はかなりくっきりしてる感じ。
ぱっと聞いた感じではその辺が変化かな。

で、今回の目玉でもあるインストバージョン集。
これ、単純な歌抜きじゃなくて、曲によってはかなりミックスが違う。
まず全体的に、通常盤よりもベース音が深い。かなり深い。
同じステレオで聞いてて「あれ、さっきこんなにベース前に出てたっけ?」と音量下げてみたくらい、違う。
これは特に『サルとユキとゴミのこども』とか『かちゃくちゃねえ』で顕著。

『かちゃくちゃねえ』は出だし直後からのミックスが違って、すぐにリズムとメロディ以外の「コード的」な音が加わって来て、曲の長さも30秒くらい長い。

一番大きく違うのは『Relache』。
元のテープ自体がそうなってたのか、いわゆる"回転数が早い"感じ。
テンポがちょっと速い上にピッチも少々高め。
その上で、1分近く長いというね。
もっとがっちり聞いたら、曲中のどこかが大幅に違うかもしれない。

ま、そんな感じで、今回の再発が気になってた方は参考にどうぞ。

まあ、それでもぼくの心はすでに、3月末にようやく発売されるという「音楽図鑑」のリマスター再発に興味が行ってます。
どんな質感になるのか。(とはいえ、今回のMIDIのリマスターシリーズはあんまり大きな変化がないからな。)
なにより、本編付属の「未発表音源」も含むというボーナスディスクの中身が気になる。
「Steppin' into Asia」のようやくのリマスターは叶うだろうか。

『Everlasting Love』 [勝手にディスクレビュー]

わりと世間的には聖子ちゃん好きと見られてるぼくですが、
同じくらい明菜ちゃんも好きでよく聞いてます。

先日、明菜ちゃんの8月に出るオールタイムベストに新曲が収録される、というニュースが出て、非常に楽しみでね。
そもそも、キレッキレのアルバム「DIVA」の発売後に、同じ路線で配信限定リリースされたシングル『Crazy Love』がようやくCD化される、ということでそれだけでも楽しみだったんだけど、とりあえず買います。

ベスト盤としての内容は、これもうキャリアの長さと持ち曲の多さ、ヒット曲だけでも相当なものなんで「あれが入ってない」てのは言ってたらキリがないわけで。

それでも、ちょっと意外だったのが2つ。
まずは『TANGO NOIR』が入ってない、ということ。
さすがにこの曲は『DESIRE』同様はずせない曲、というイメージがあったので「えー、入らないんだ」という、ちょっとびっくりな件。

それともう1つは『Everlasting Love』が収録されてるということ。
この曲は1993年に、明菜ちゃんがレコード会社を移籍して最初に出したシングル。
だけど、直後のアルバム「UNBALANCE + BALANCE」には入らなくて。
ライブでも歌ったことないという歌で、一部では「本人が気に入ってないから歌わない」という話もあるらしいんだけど。
この曲が収録される、というのが何とも意外で。

正直、初めてこの歌をTVで聞いた時に「なんて地味な歌をシングルにしたんだろう。しかも2年ぶりのシングルなのに」と思ったんだよね。
ちなみに作詞:大貫妙子/作曲:坂本龍一というすごい布陣なんだけど、えらく地味で。
当時からその傾向が出て来た坂本龍一の「音符の少ないメロディ」でね。
売れるか売れないかって言ったら、確実に売れる歌ではないな、と。
今でも、この時点でのシングルが『愛撫』だったらその後の活動が変わったと思ってるんだけど。

ま、そんなえらく地味なシングル『Everlasting Love』。
でも、ぼくこの曲わりと好きでね。
やさしく柔らかいイメージのシングルって、明菜ちゃんではほかにないし、系譜的に見ても確実に異質な曲なんだけど。
それは坂本龍一だから、ってのも完全にないとは言いきれないけど、悪い曲ではないよね。
なんか、聞いてるうちにじわじわ入り込んでくる感じ。
多分、この曲を拒絶する人は、その「じわじわ入り込む」前に「つまらん!」てシャットアウトしちゃってるんじゃないかな、と。
ま、それもわからなくはないが。

今回ベストに収録されるということで、「あれ、別に明菜ちゃん本人が嫌いだということではないのかな?」と思って、あらためて聞いてみて。
(ちなみに、選曲に本人がどこまで携わったかはわからないけど、勝手ベストではないし、本人のコメントも出てるので「どうしても嫌な曲」はさすがに省かれてると思うんだよね。)

このシングルがアルバムに入らなかったのは、単に当時の方針で「シングル曲はアルバムに入れない」という方向だったとのこと。
でもって、直後のアルバムは、たしかにこの曲が入ったらちょっと浮く。

で、ライブでこの歌を歌わないことに関して。
この曲を生演奏でライブで歌う、というのがなんだか違う気がする、というのが正解かな?
TVで歌った時は全部カラオケで、あの坂本龍一の音の質感があったわけだけど、そうじゃない音で歌う歌かな、というと、どうだろ、と。
前に本人が『禁区』に関して「どうしても他の歌と混ざらない」と言ってたことがあるので、それと同じことじゃないかな、と。

となると、決して「嫌いな歌」ではないのかな、ってね。

というわけで、今度のベスト盤。
楽しみです。

ふたりのラジオを鳴らそうよ/くじら [勝手にディスクレビュー]

発売されてからそろそろ1ヶ月。
久しぶりに、新譜でここまで聞きこんだアルバムですね。
家のステレオで聞き、PCで聞き、iPodで聞き、もうすっかり頭の中で勝手に鳴らせるくらいまで聞いたアルバムをご紹介。

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くじら 「ふたりのラジオを鳴らそうよ」
2013年7月24日発売
TGC-036

15年ぶりのニューアルバム。前作アルバム「木星クラブ」以降、ライブで発表された新曲は数知れず。
自主制作でどれくらいかは音源化してるものもあるようなんだけど、一般に流通するものとして、今回は11曲。

今回は杉林さん、いつものドラムの楠さんに加えてベースに中原さん、ピアノに近藤さんという4人編成のバンドとしての「くじら」でレコーディングされたアルバム。
まずタイトルの「ふたりのラジオを鳴らそうよ」というのが、今までのくじらのアルバムとはちょっと違う雰囲気。
くじらのアルバムタイトル、のみならず楽曲のタイトルって結構単語1語だったり、簡潔なものが多い中で、今回はこのタイトル。
ちなみにこれは収録曲『かわいいひと』の歌詞の一部で、この歌は「ふたりで頭を洗おうよ」「ふたりのラジオを鳴らそうよ」と、ちょっとオトナエッセンス入り。

さて、音としては。
一聴してまず今までと違うのは、全編に渡ってピアノの音が響いてることかな。
今までのアルバムでも打ち込みのシンセが鳴ってたり、オルガンが入ってたりというのはあるんだけど、ここまでピアノ(時にエレピ)が下地にあるのは初めてだと思う。今までのくじらにありそうで無かった手触りと言うか。

もう1つ、雰囲気が違うな、と思うのが2,3曲目。
くじらの音楽のいちばんの特徴って、とにかくコードの展開が少ないのね。
ワンコードだったり、2つから4つのコードをループさせた中で曲が進行して行く、というのがほとんどで。
その、コードの少なさに乗るメロディの妙、というのが非常に耳と興味を惹くところなんだよね。
それが、アルバム最初の『女たちが泣いているから』でそんないつものくじらを鳴らした後に続く『みずたま』『エリコ』という2曲に関しては、(変な言い方だけど)普通の展開をする曲が続くのね。
Aメロ/Bメロ/サビというそれぞれに展開がある形の曲、ということなんだけど、それが2曲続くだけでくじらの音楽としては若干「異質」なものを感じてしまう、というね。なんか新鮮な感じ。(決して今までそういう曲がまったくなかった、と言うわけではないんだけど。)

くじらの歌は、その言葉もまた魅力のひとつ。
杉林さんの書く言葉は、文学の不条理とファンタジーの縁をたどってるような感覚があって(感覚なんでうまく説明できない・・・)読むと、なんとなくの空気感が目の前にあらわれる、という感覚。んー、感覚。
今回のアルバムの中でもその感覚は満載で。
「水鳥が羽ばたく だけどまだ飛ばない
 少し声をあげたら 消えてしまう」   (『エリコ』)
とか、きれいだなあ、とね。
書き出すと全部になっちゃうから書かないけど、『えいえんの種まき』なんて完全に詩で、声に出して読んだらなんかじわっと涙出てきそうな。
ちなみに、昔のアルバムの曲だけど、
「よそみしてると帰れなくなるよ
 よそみしてるとぼくを好きになるよ  きっと」  (『よそみ』)
というフレーズにはまいりましたね。

個人的に今回のアルバムで好きな曲は、ゴーゴーに乗せてレトロフューチャーな歌詞が炸裂する『マッチ工場の火星人』かな。
ちなみにこの曲のメロディ、ほんとに不思議なメロディなんだけど、勝手な想像では、元々あったメロディにハモリをあてたそのフレーズを、メインのメロディとして取り出しちゃったんじゃないかな、と。そんなメロディ。
あとは、ライブで「地獄巡りにお連れします」と言って演奏された、だるだるファンクの『ふたこぶらくだに会ったら』。だるま和尚のハンドクラップ、てのにやられる。

そのほかにも、曲としてはほんとにバリエーションに富んでる11曲で。
フォルクローレのような『エリコ』、ブルースロックの『かわいいひと』、諦念感とともに芯がある『ロンド』、気だるいブルースの『バタフライブルース』など。
『バタフライブルース』の「センター街にあった天まで届くゲーセン」というのは、あの「頭と指先を鍛えよう」で有名なあそこのことかな?

ちなみに、最後に置かれた『電球王国』は、ライブではいつも照明を消して真っ暗な中で歌われる楽曲。真っ暗な中で聞くと、ものすごく物語を追っちゃうね。

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このアルバム、一般発売に先行したレコ初ライブで全曲、生で聞いたわけで。
ライブではバイオリンとサックスがほぼ全編に渡って入ってたので、それはそれでアルバムよりゴージャス感アップな音だったんだよね。
でも、4人だけの音の方が、なんだかんだしっくりきたりもする。家に帰ってあらためて聞いて、そんな感じがした。

こちらのページでは、今回のアルバムのトレーラーと、1曲目の『女たちが泣いているから』のPVが見られます。
ぜひ見てみてくださいな。
焚火社HP
(ちなみにトレーラーで聞けるのは、順に『みずたま』『ロンド』『女たちが泣いているから』の3曲)

というわけで、今までよりさらに深くなったくじら。
次のこと言っちゃあれかもしれないけど、次のアルバムは15年待たせないでください。
曲はたくさんあるのですから。ぜひ。

矢野顕子、忌野清志郎を歌う/矢野顕子 [勝手にディスクレビュー]

久しぶりに「勝手にディスクレビュー」をしようかな。
と思いたい1枚を聞いたもので。

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矢野顕子 「矢野顕子、忌野清志郎を歌う」
2013年2月6日発売
YCCW-10192

忌野清志郎の曲を10曲。
本人の弾き語りで8曲と、エレクトロニカ的なアレンジで2曲。
さらに、矢野さんの『ひとつだけ』をデュエットしたものが最後に加わっての全11曲。

ぼくはRCもそんなにどっぷり聞いてなかったし、解散後のいろんなユニットとかソロのアルバムとかも、
しっかりと聞いたわけではなくて。
ただ、毛嫌いして聞かなかったわけでもないし、それなりに耳に入ってくるものは聞いてたし。
でも、やっぱり知ってる曲は決して多くはない。

多分、そういうぼくみたいな人と、ずっとずっと清志郎さんを好きで聞いてた人とでは、
このアルバムの聞き方も印象も、全く違うものなんだろうなあ、と思う。

矢野さんの弾き語りによるカバーの特徴でもあるんだけど、
楽曲の芯がものすごくあらわにされるでしょ、この人の歌とアレンジは。
そういう点でも、間違いなく「作家:忌野清志郎」に焦点を当てることになってるんだよね。
だから、ぼくなんかは「いい歌だなあ」と単純に思うだけだけど、
清志郎さんの歌が好きな人にとっては「いや、これはこういう歌じゃない」と思う人もいるかもしれないし、
逆に好きな人だからこそ「よくぞ、この部分を表に出してくれた」と言う人もいるかもしれない。
(ちなみに、ぼくは矢野さん弾き語りのSMAPの『しようよ』をライブで聞いた時に「この歌はこんなにすごい歌だったのか!」と気がついたことがあった。)

今回のアルバムの中でぼくが知ってたのは3曲だけ。
そのうち2曲はバンドアレンジされたもので。やっぱり知られた曲は、わかりやすい弾き語りよりも、ということだったのかな?
1曲目の『500マイル』はほぼフリージャズで、アルバムの入口をすんなり通してはくれない設計。
『デイ・ドリーム・ビリーバー』は弾き語りだけど、サビが来るまで、いや、サビが来ててもそれと気がつかないかもしれないほどの換骨奪胎具合で、早くも真骨頂、という感じ。
『多摩蘭坂』は、オンド・マルトノがころころと響く、イメージ的にはドイツ歌曲のような仕上がり。原曲や、弾き語りならこうくるだろうな、というイメージから全く想像着かないアレンジになってて、アルバムの折り返し担ってる感じだね。

それ以外の曲は原曲を知らないので、それとの比較はできないんだけど、
単純に、いい曲が並んでるなあ、とね。
『雑踏』の「会いたい人がいるんだ」の切ない感じだったりとか、後半の『約束』『恩赦』『セラピー』というならびにグッとつかまれてしまって。
『約束』の「また今度会いたいね」とか、『セラピー』の「そんなに心配するなよ」って言葉が何とも言えない思いにさせられる。

で、そんな気持ちにさせられたところで、矢野さんと清志郎さんのデュエットで『ひとつだけ』が全部を包んでくれちゃって。
最初にアルバム通して聞いた時に、『ひとつだけ』の1コーラス終わった辺りでわけもわからず涙が込み上げて来て、ぼろぼろ泣いてしまった。
1曲1曲を聞いてももちろんすごいんだけど、1枚通して聞くことでその力にひれ伏すしかない、というか。
天才2人にしてやられた。

ご本人が言ってたように
「ぜひ聞いてほしい。そしてこれを聞いた後に、原曲をぜひ聴いてほしい。」という通り、これは原曲もきちんと聴かなきゃいけないな、と思った。

このアルバムを、キヨシローファンはどう聞いたか、聞いてみたいね。

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レコード会社の、このアルバムのトレーラーがYouTubeに上がってるので貼っておきますね。
気になった人はぜひ聞いてみるべきだと思います。


おまけだけど、先日のFMの美雨ちゃんの番組に出演したときの音声があがってたので、これも聞いて見るとおもしろいかも。
完全に矢野さんがお母さんの声になってる。
そして、美雨ちゃんにとって「お父さんとキスした人」という認識。

今回のアルバム。
タイトルが「トリビュート」とか大げさなものじゃなくて「忌野清志郎を歌う」という、その事実だけをタイトルにしてるのが、いちばん感慨深かったりするね。
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