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ふたりのラジオを鳴らそうよ/くじら [勝手にディスクレビュー]

発売されてからそろそろ1ヶ月。
久しぶりに、新譜でここまで聞きこんだアルバムですね。
家のステレオで聞き、PCで聞き、iPodで聞き、もうすっかり頭の中で勝手に鳴らせるくらいまで聞いたアルバムをご紹介。

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くじら 「ふたりのラジオを鳴らそうよ」
2013年7月24日発売
TGC-036

15年ぶりのニューアルバム。前作アルバム「木星クラブ」以降、ライブで発表された新曲は数知れず。
自主制作でどれくらいかは音源化してるものもあるようなんだけど、一般に流通するものとして、今回は11曲。

今回は杉林さん、いつものドラムの楠さんに加えてベースに中原さん、ピアノに近藤さんという4人編成のバンドとしての「くじら」でレコーディングされたアルバム。
まずタイトルの「ふたりのラジオを鳴らそうよ」というのが、今までのくじらのアルバムとはちょっと違う雰囲気。
くじらのアルバムタイトル、のみならず楽曲のタイトルって結構単語1語だったり、簡潔なものが多い中で、今回はこのタイトル。
ちなみにこれは収録曲『かわいいひと』の歌詞の一部で、この歌は「ふたりで頭を洗おうよ」「ふたりのラジオを鳴らそうよ」と、ちょっとオトナエッセンス入り。

さて、音としては。
一聴してまず今までと違うのは、全編に渡ってピアノの音が響いてることかな。
今までのアルバムでも打ち込みのシンセが鳴ってたり、オルガンが入ってたりというのはあるんだけど、ここまでピアノ(時にエレピ)が下地にあるのは初めてだと思う。今までのくじらにありそうで無かった手触りと言うか。

もう1つ、雰囲気が違うな、と思うのが2,3曲目。
くじらの音楽のいちばんの特徴って、とにかくコードの展開が少ないのね。
ワンコードだったり、2つから4つのコードをループさせた中で曲が進行して行く、というのがほとんどで。
その、コードの少なさに乗るメロディの妙、というのが非常に耳と興味を惹くところなんだよね。
それが、アルバム最初の『女たちが泣いているから』でそんないつものくじらを鳴らした後に続く『みずたま』『エリコ』という2曲に関しては、(変な言い方だけど)普通の展開をする曲が続くのね。
Aメロ/Bメロ/サビというそれぞれに展開がある形の曲、ということなんだけど、それが2曲続くだけでくじらの音楽としては若干「異質」なものを感じてしまう、というね。なんか新鮮な感じ。(決して今までそういう曲がまったくなかった、と言うわけではないんだけど。)

くじらの歌は、その言葉もまた魅力のひとつ。
杉林さんの書く言葉は、文学の不条理とファンタジーの縁をたどってるような感覚があって(感覚なんでうまく説明できない・・・)読むと、なんとなくの空気感が目の前にあらわれる、という感覚。んー、感覚。
今回のアルバムの中でもその感覚は満載で。
「水鳥が羽ばたく だけどまだ飛ばない
 少し声をあげたら 消えてしまう」   (『エリコ』)
とか、きれいだなあ、とね。
書き出すと全部になっちゃうから書かないけど、『えいえんの種まき』なんて完全に詩で、声に出して読んだらなんかじわっと涙出てきそうな。
ちなみに、昔のアルバムの曲だけど、
「よそみしてると帰れなくなるよ
 よそみしてるとぼくを好きになるよ  きっと」  (『よそみ』)
というフレーズにはまいりましたね。

個人的に今回のアルバムで好きな曲は、ゴーゴーに乗せてレトロフューチャーな歌詞が炸裂する『マッチ工場の火星人』かな。
ちなみにこの曲のメロディ、ほんとに不思議なメロディなんだけど、勝手な想像では、元々あったメロディにハモリをあてたそのフレーズを、メインのメロディとして取り出しちゃったんじゃないかな、と。そんなメロディ。
あとは、ライブで「地獄巡りにお連れします」と言って演奏された、だるだるファンクの『ふたこぶらくだに会ったら』。だるま和尚のハンドクラップ、てのにやられる。

そのほかにも、曲としてはほんとにバリエーションに富んでる11曲で。
フォルクローレのような『エリコ』、ブルースロックの『かわいいひと』、諦念感とともに芯がある『ロンド』、気だるいブルースの『バタフライブルース』など。
『バタフライブルース』の「センター街にあった天まで届くゲーセン」というのは、あの「頭と指先を鍛えよう」で有名なあそこのことかな?

ちなみに、最後に置かれた『電球王国』は、ライブではいつも照明を消して真っ暗な中で歌われる楽曲。真っ暗な中で聞くと、ものすごく物語を追っちゃうね。

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このアルバム、一般発売に先行したレコ初ライブで全曲、生で聞いたわけで。
ライブではバイオリンとサックスがほぼ全編に渡って入ってたので、それはそれでアルバムよりゴージャス感アップな音だったんだよね。
でも、4人だけの音の方が、なんだかんだしっくりきたりもする。家に帰ってあらためて聞いて、そんな感じがした。

こちらのページでは、今回のアルバムのトレーラーと、1曲目の『女たちが泣いているから』のPVが見られます。
ぜひ見てみてくださいな。
焚火社HP
(ちなみにトレーラーで聞けるのは、順に『みずたま』『ロンド』『女たちが泣いているから』の3曲)

というわけで、今までよりさらに深くなったくじら。
次のこと言っちゃあれかもしれないけど、次のアルバムは15年待たせないでください。
曲はたくさんあるのですから。ぜひ。

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