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『ブルージュの鐘』に関する一考察 [音楽]

今日は少しばかり、マニア的推測のお話。
そして最初に「敬称略」のおことわり。

松田聖子の1982年のアルバム「Candy」の中に、『ブルージュの鐘』という名曲があります。
細野晴臣の作曲で、落ち着いた叙情のある曲です。
ファンの間ではこの曲、「幻の1stテイク」があることでも有名な曲です。
アルバム発売当初の1st,2ndプレスまでのものと、それ以降のプレスで、
聖子ちゃんの歌が全然違うのです。
「歌い方が違う」「テイクが違う」というようなものではなく、
「そもそも歌った時期が違う」というくらい、声そのものが違うのです。
現行CDで聞けるものは全て、「それ以降」のものです。

聖子ちゃんの声は、シングル『風立ちぬ』の時期に、過労から喉の調子を悪くしてしまい、
次のシングル『赤いスイートピー』の頃から声/歌い方が変わります。
それまでの勢いのある声から、「キャンディボイス」と呼ばれる艶っぽい甘い声になるのです。
今聞ける『ブルージュの鐘』は「キャンディボイス仕様」のもの。
幻のテイクは、以前の歌い方に近いものです。
なぜこのようなことになってるのか、いまだにはっきりしたアナウンスは一切出てないのです。
そんなことをちょっと頭の隅に置いてもらって話は少し時期を遡ります。

シングル『夏の扉』でノリに乗っている時にリリースされた1981年のアルバム「シルエット」。
この中で1曲だけ、スポットお試し登板で松本隆が初めて聖子ちゃんに詞を書きます。
そして次のシングル『白いパラソル』で、シングルも担当することになります。
ここできっと「次のアルバムは全面松本さんで行きます。曲の人選は好きにやってください」
というような通達があったのではないかな、と。
一番勢いのあるアイドルで好きにやっていいよ、となって、松本隆は昔の仲間、
“はっぴいえんど”大滝詠一鈴木茂に声をかけて、2人を歌謡界に引っ張り出します。
この時期はまだ松本隆本人も、その後の”松田聖子のアイデンティティを作る”ほどの存在になるだなんて、思ってもなかったのではないかな、って。
だからこそ、「できるときに、やれることを」って、この人選になったんじゃないかな、ってね。

そして2人に半分ずつプロデュースをお願いしてできたアルバムが「風立ちぬ」です。
A面5曲を大瀧さんが、シングルリリースされてた「白いパラソル」以外のB面残り4曲を鈴木茂がアレンジプロデュースをする、ということで、
このアルバムの中で”はっぴいえんど”の4人のうちの3人が邂逅するわけです。
細野さんだけが、ここでは登場しません。

これが、現在目に見えてる形で歴史となっている事実。

さて、ここからは仮説です。
このタイミングで細野さんが登場しなかったのはなぜなのか。

いや、そうじゃない。
きっと松本隆は細野さんにも声をかけていたのだろう、というのが今日のテーマ。
松本さんは大瀧さん、茂さんだけではなく、細野さんにも声をかけていただろう。
そして少なくともこの時点で細野さんの曲も、1曲はレコーディングがされていただろう。
そう、それが先述の『ブルージュの鐘』
幻の1stブレスの歌声を聞く限り、アルバム「風立ちぬ」の時期に録音していた、と考えてもおかしくないわけで。
人選的に考えても、わざわざ1人だけを外す意味はない。
仮説ではあるけど、この時期に曲があったのは間違いないんじゃないかな。
実際に「風立ちぬ」収録曲と1stプレスの『ブルージュの鐘』を並べて聞いても、声に違和感はないからね。

さて、ここからいろいろと考えるのが楽しいところ。
まずは『ブルージュの鐘』が「風立ちぬ」に収録されてたらどんなアルバムになってたか。
大滝/鈴木/細野の担当バランスはどんな感じになる予定だったのか。

そして、なぜ今の形に落ち着くことになったのか。
○レコード会社側が「はっぴいえんど」色が濃くなるのを避けた。
○大滝/細野の楽曲に対して鈴木曲が弱くなるのを避けた。(失礼!)
○誰とは言わないが、共存を拒んだ(!)
まあ、これは「松田聖子」を売りたいところに「はっぴいえんど」のことばかりが話題になるのを避けた、というところが正解のような気がする。
アルバム「Candy」では大瀧さんと細野さんが2曲ずつ担当してるからね。
(「Candy」には茂さんは登場しない)。

で、なぜ「Candy」の1st,2ndプレスだけボーカルテイクが違うのか、という問題。
これは、正直あまり深い意味はないんじゃないかな、って考えてる。
ひとつは、単純な手違い。
録音し直したのに、プレスに回すときに前のボーカルのままで送ってしまったという説。
もうひとつは、「そぐわなかった」説。
1曲だけあまりに声が違うので、すでにリリースしてしまったものの「やっぱりこれ、録り直しませんか」ということになって、しれっと3rdプレスから差し替えた、という説。

ちなみにだけど、このアルバムに収録されてる細野さんのもう1曲『黄色いカーディガン』という曲は、ボーカルテイクは同じだけど3rdプレス以降は微妙にミックスが違う。
わかりやすいのは、コーラスの入り箇所の違い。
そんなことも合わせて考えると、んーー、いや、わからないな。
どちらも考えられる。

謎は謎のまま、でもいいんだけど、
どこかのタイミングで誰かにインタビューで聞いてみてもらいたい。
そして、1stプレス分のボーカルのものも、何かの機会にしっかりデジタル化して残してほしい。
『いちご畑でFUN×4』が正規リリースされるくらいなんだから。

ということで、アルバム「風立ちぬ」は、もしかしたらはっぴいえんど裏方再結成になってたかもしれない、というお話でした。
2000年に発売された聖子ちゃんの作曲者別にコンパイルされた8枚組ボックスの中には、
通称「はっぴいえんど盤」と呼ばれる1枚があって、3人の作曲楽曲が余すところなく収録されてるナイスな1枚です。

——
さて、聖子ちゃんの楽曲に関して、妄想的に思い巡らせてる話がもう1つある。
近いうち、それも話させてくださいませ。
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