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影響を受けてるのではなく、影響されてる元が同じなんです [音楽]

そろそろ、ちゃんと書かなきゃな。

ぼく、実に日常的に坂本龍一の音楽を聴いてます。
全キャリアの中からぼくが好きだと思う曲(結構な量よ)をiPodに入れて、ほんとよく聴いてる。
「今、ちょっと言葉のある音楽じゃない方がいいな」という時は、まず最初に候補に上がるくらい。
だから、今月初めにニュースを目にしてしまって脱力し切ってしまった時も、
その帰り道はいつものように聴きながら帰った。その音楽を聴くことは、まったくもって特別なことじゃない。
もちろん、ちょっと気持ちは違ったけどね。その時は。

ぼくの作る曲、特に言葉の入らない曲においてはよく、「坂本龍一好きでしょ」って言われるのね。
もちろん好きです、と。
ただ、「坂本龍一の影響受けてるね」と言われたら「いや、そうじゃないんです」と。
これ、同じ土俵で語るのはほんと烏滸がましいことだってわかった上で言うことだけど、
ぼくの音の影響は坂本龍一ではなく、ドビュッシーなんですよ。
ドビュッシーの影響を大いに受けている、という点で坂本さんとは同じなのです。
さすがにぼくは「なんで自分はフランス人じゃないんだ」とまで思ったことはないけど。
そんな、同じところに影響を受けた人の音楽が、引っかからないわけがない。

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ぼくが初めて坂本龍一という人を認識したのはベストテンで見た『い・け・な・いルージュマジック』
どちらかといえばあの時はキヨシローの方が印象強かったけど。
その後に『君に、胸キュン。』でYMOが出てきた時に「坂本龍一ってYMOの人だったんだ!」と知る。
小学校3〜4年生くらいの話ね。

その後、6年生になった頃にテレビで『STEPPIN’ INTO ASIA』を演奏してるのを見て。
多分、矢野さんと一緒に出てたヒットスタジオだったんだろうな。
(ちなみにその時に、坂本龍一と矢野顕子が夫婦だということも知った。)
その曲にものすごく興味を惹かれてね。
で、近くのレンタルレコード屋でシングル版を借りてきて、テープに録音して繰り返し聴いてた。
同じ頃に映画「子猫物語」のCMもたくさん流れてきて。
その音の展開の気持ちよさに心持って行かれて。
中学生になって、地元の図書館でカセットテープを借りられるようになった時に、
「未来派野郎」を借りて、ほんとによく聴いてた。
だから、ぼくにとっての坂本龍一の原点は、その辺。
そこから遡って「Esperanto」とか「音楽図鑑」を聴いてみたりしたのかな。
(同時に矢野顕子にもどっぷり浸かって行ったなぁ。)
そこからはコンスタントに聴いてきてる。

とはいえ、全部が全部、好きだというわけではない。
沖縄への傾倒が強くなって行った頃は「そろそろ戻ってきて」と思ったし。
近年のノイズ/アンビエント系のものは「これはおれの好きな音ではない」と思ったり。
たくさんたくさん聴いてきたからこそわかったのは、
ぼくは坂本龍一の「ハーモニー」と「リズム」が好きなんだ、と。
クラシック的なアプローチももちろん好きなんだけど、
それよりも、一聴して「坂本龍一の打ち込み」とわかるあのリズムが好きなんだ、と。
いちばん好きなアルバムが「heartbeat」である、というのはきっとそこ。
あの時期にプロデュースした作品でも、中谷美紀の『天国よりも野蛮』とか、
中森明菜の『NOT CRAZY TO ME』とか、薬師丸ひろ子の『二人の宇宙』とか。
自身の大胆なリミックスである『MERRY CHRISTMAS MR.LAWRENCE (DRIVES R.S.)』なんか大好き。
その手の打ち込みとはちょっと違うけど、竹中直人の『君に星が降る』もリズムが気持ちいい。

ハーモニーとしてはやっぱり「THE LAST EMPEROR」のテーマの、曲中でふっと転調する瞬間とかたまらないね。
全部聞くと17分と長尺だけど、『El Mar Mediterrani』の大テーマ部分の音の動きなんか、何度聞いてもゾクゾクするよね。
『A Flower is not a Flower』とか『TANGO』の、切なさとか憂いに優しさが醸される、メジャーとマイナーが絡み合って展開する世界観とか。

そういうところが好きなので、近年の、もはや「音」を探るような曲はあまり入り込めてない。
初期の「B-2 UNIT」とかの「いかにハーモニーから外れたことをするか」を実験してた頃のものも、あまり好んでは聞いてない。

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昨年末の配信ライブ。
4回放送されたうち2回見たのだけど、あれはいろんな意味でおもしろかったな。
「自分が枯れている」とわかった中で、それでも新しい試みをしようとする。
そしてその中で、今までまったく思いもよらなかった音が出てくる。
ほんと、あの『東風』を聞いて、「この展開部はこんなにも美しいものだったか!!」て初めて気付かされたし。

ただ、あれを見て自分の中の何かが、何かを感じ取ったのかもしれない。
年越しの数日前くらいから、持っている坂本龍一作品をくまなく、聞き直してみよう、と思った。
聞いてて退屈なだけの、よくわからないリミックス集まで、あえて。
1度聞いただけのままだったサントラ盤とかもね。
意外にも、そんなにたくさん聞かなかったサントラの曲をしっかり覚えてたりとか、
改めて聞いたら好きな曲がたくさん入ってるサントラもあったりして。
『Alexei and the Spring』なんて、かなり好みの音だったんだな。

——
今後、坂本龍一の新しい音楽を聴くことができなくなるのは、この上なく残念なこと。
ここ数年の「音」になってきていた彼の音楽が、さらにその後どこに変化していくのか、
もっと聴いてみたかった。知りたかった。

ただ、そんな一方で、
坂本さんには一般に発売されなかった楽曲というのもたくさん存在してる。
企業向けの音楽とか、CMだけで使われた曲とか。
そうしたものを「Year Book」というシリーズ名でまとめてくれてたのだけど、
現時点でミッシングリンクになってる「1990-2004」のものを早く編纂してほしい、
とここ数年ずっと待ってる。
舞台「浪人街」のテーマ音楽、3バージョン作られてるはずで、
ぼくが一番好きだった、芝居の導入時に使われていたバージョンだけいまだに公に出てない。
そんな音源も、聴けるようにしていただきたい。
誰かが、きちんとそこを引き継いで、世に出してくれるのを待ってる。
新しい曲は聞けなくても、聞けなかった曲を聴けるようになる可能性はまだある。
せめて、それを待つ。

——
多分、これからも変わらず、
「今日は坂本龍一を聞こう」って、日常の中で聞いていると思う。
ぼくにとっては、いつもポケットの中に入ってる、そんな感じ。
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