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âge/斉藤由貴 [勝手にディスクレビュー]

久しぶりの「勝手にディスクレビュー」。
今回は先日から中澤さんとのやりとりで盛り上がってる斉藤由貴のアルバムからひとつ。

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斉藤由貴「âge」
1989年4月21日発売 PCCA50138

ここ数年はすっかり女優さんの斉藤さん。もちろんデビュー当時はアイドルであり歌手であり。当然女優でもあった訳だけど、デビューシングル『卒業』は今でも季節になると必ず耳にする名曲として歌い継がれてますね。
『悲しみよこんにちわ』『青空のかけら』『夢の中へ』などシングルとしても相当はやった歌もたくさんありながらも、この方、実は完全に「アルバムアーティスト」です。
これはアイドルだった頃から。音楽面は全面的に武部聡志が担当してたこともあって、アイドルにしては相当曲に恵まれてる人でした。珍しいくらいに捨て曲がない。
また、早いうちから自分で言葉も書いてたりして、ほかの活動と音楽が乖離せずに非常にいいスタンスで続けられてました。歌が特別うまいか、というとそういう訳でもないかな、とおもうんだけど、この方の場合は根が「女優」さんなので、歌の中にも女優の部分が出てきたりして。
声の質感がいいんですね。
いろんな作家さんが曲を提供してるんだけど、その中でも当時新人だった崎谷健次郎との相性は、それはそれはもうがっちりな組み合わせで。
2枚目のアルバム『月野原』にはじまり『アクリル色の微笑』『ONE』『体育館は踊る』『ひまわり』など名曲が続々。
当時、崎谷さん作曲のものだけ集めてテープを編集するほど好きでした。
今回とりあげるアルバム「âge」(「アージュ」と読みます)は、初めて武部さんから離れたアルバム。
全曲の作編曲とアルバムプロデュースを崎谷健次郎が担当。
また、1曲をのぞいて作詞は、それまでの提供でも相当相性の良かった谷山浩子が担当。
どちらかというと「静かな歌を歌う」という印象の強かった斉藤さんにいきなり「動」がもたらされたアルバムでもあります。
当時の崎谷さんは初期の「ハウス」にかなり凝っていて(まだあまり他の人が使わなかった頃)、アルバム全面にそれが心地よくちりばめられてます。
ドラマの主題歌だった(にもかかわらずシングルカットされなかった)1曲めの『LUCKY DRAGON』が一番知られてるかな。
思い切りダンサブル仕様ではじまって2曲目『N'oublie Pas Mai(5月を忘れないで)』を通り越し、3曲め『ガラスの天球儀』まで。この曲、当時の先輩が「WINKの曲かと思った」というほどのはねっぷり。
4曲め『LUNA』は一転オルゴールの音と雪を踏むようなザッザッとたんたんと続くリズムだけで出来たようなちょっぴりホラー気分。
「あなたが今何か話している/つらそうに視線をそらしながら」と歌う5曲め『永遠のたそがれ』の、静かに終わって行く感じは曲と言葉がものすごく寄り添ってます。
6曲め『DOLL HOUSE』はぼくがアルバムの中で一番好きな曲。軽いボサノバ仕立てで、ピアノのフレーズが気持ちよい。
続く『あなたの存在』は唯一本人作詞の曲。たんたんとした3拍子で、調性が不安定になって行く中で「私の日常を冷たくおびやかす/あなたの存在が許せないのよ」と呪文のように恋人のことを歌うこの曲も、相当好きな曲です。
8曲め『雨色時計店』ではじめて「普通のポップス」登場。ちょっと落ち着きますね。
9曲め『IN MY HOUSE』は非常に妙な曲で、歌自体は斉藤さん歌ってません。思い切りハウスなビートに斉藤さんの声がサンプリングされたり台詞ともつかない台詞が乗ったりという、でも「なんだか流されちゃう」感覚にのせられる一品。
で、最後に『LUCKY DRAGON』のリミックスでアルバム終了。
ちなみにこのアルバムと同時発売の『夢の中へ』は収録されず。まあ、このアルバムの中では居場所がないですわ、やっぱりこの曲は。シングルはヒットしましたね。

実は、ぼくはこのアルバムは「崎谷健次郎のアルバム」という系譜でとってもいいと思うのですね。メインボーカルに斉藤由貴を迎えた崎谷健次郎のアルバム。でも、当然のことながら斉藤由貴のアルバムとしてもすばらしいアルバム。
斉藤さんはこの後、短編集の文庫本のような「MOON」、当時の自身の恋愛を赤裸々に綴ったと思われる「LOVE」という傑作を生み続けて行くわけで。
この3枚と、さらにその後「女優が歌手に戻ってみました」という感じの穏やかなアルバム「moi」もあわせて4枚。本当にすばらしいアルバムを残してしばらく歌手業から遠ざかってる訳ですね。たまにぽろっと超単発仕事してるけど。
この辺のアルバムの話を深くできる人ってあまり多くないですね。この辺こそじっくり語れるアルバムなのに。
ちなみに、斉藤さんと崎谷さん。この「âge」の後にも「MOON」「LOVE」でそれぞれ2曲ずつ楽曲提供してるけど編曲まではしてないです。どれもさすがにすばらしい曲。
さらには2001年のリーディングドラマ「フレンズ」で役者と音楽の関係で同じ舞台に立ち、さらには2002年にavexから発売された「Disney's HAPPY SONGS/Disney's LOVELY SONGS」という、80年代のアイドルがディズニーの歌を歌う、という企画アルバムにおいて、斉藤さんの2曲『スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス』『ララルー』で崎谷さんが編曲を担当する、という形でコラボレーションが続いてるようです。

うん。今聞きながら書いてたけど、やっぱり名盤だ。
http://www.toho-ent.co.jp/talent/saito/saito.html


1234/大江千里 [勝手にディスクレビュー]

ずいぶん久しぶりの「勝手にディスクレビュー」。今日はこんなあたりで。
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大江千里「1234」
1988年7月21日 32・8H-5034

ぼくの作る曲に大きく影響を与えてるミュージシャンはKANだ、と前に書いたことがあるけど、実は大江千里にも相当影響されてると思っている。やっぱり基本がピアノの人に偏るのかな。KANにしても大江千里にしても、おそらくもともとの要素として「鍵盤」ていうのは往々にしてキーワードになるんだと思う。
でもって、KANにしても大江千里にしても、「言葉数が多い」という特徴がある。言葉を詰め込む感じ。その言葉の詰め方のリズム、ってのがぼくには心地いいんだと思う。自分で曲作ってもどちらかと言えば言葉は多くなるしね。それはこの辺からの影響が多大にあるんだろうな。加えて、情景描写を多く使う言葉の書き方も、特に大江千里からは影響されてるな。

さて、この「1234」と言うアルバムは、ぼくが中学3年のときのアルバム、てことになるんだな。
いやあ、本当によく聞いたアルバム。というか今でもかなりの頻度で聞くアルバム。というのも、毎年8月頃に「もう少しすると雨が降ってきそうな、雲が低くなって湿った風が吹いてくる日」ってのがあるでしょう。その状況になると決まってこのアルバムの収録曲『Rain』を聞きたくなるのね。彼の曲の中では、もしかしたら「いちばん好きです」って言えちゃうかもしれないくらい好きな歌。あんまり、そのアーティストの「いちばん好きな歌」って特定できないもんなんだけど。何がそんなに好きなのかはわからないけど、強いて言うなら「曲の持つ空気感」とでもいうのかな。あ、でも、好きなものなんて大概そんなもんか。ちょっと話し外れるけど、槇原敬之が98年に出した「Listen To The Music」っていうカバーアルバムがあるのね。このアルバムの収録曲見て、ぼくは相当ぶっ飛んだのですよ。シングル曲でもない、この『Rain』が選曲されてて。さらには、池田聡の『月の舟』と来た。こんなのを選曲するのが自分の他にもいるのかと思って相当うれしいと言うか、あまりの趣味の近さに一気に親近感。兄弟って勝手に言いたいくらい。(しかも、その他にも矢野顕子とか大貫妙子とかだしね)。
閑話休題。
この「1234」は、わりと一般的に大江千里のイメージを作った『GLORY DAYS』で始まることから、ぼくの中では「ここでメジャーになった」アルバム、という風にとらえてる。でも、一般的には違うのかな?やっぱりこの後の『お願い天国』とか『格好悪いふられ方』なのかな。
さっき「言葉の詰め込み」って話をしたわけだけど、そんな彼の中でも、このアルバムはその頂点なんじゃないか、と思う。『平凡』とか『ROLLING BOYS IN TOWN』『昼グリル』なんてあたりがね。「歌詞」であるんだけど、すでに「文章」の領域に入ってるような、そんな言葉。
『サヴォタージュ』はシングルじゃないわりに知ってる人も多い曲。これって、実はピアノロックな曲だよな。(あ、これ弾き語りできるかも)。情景描写がいちばん強い曲かもしれない。
最初に聞いてた頃は、唯一『帰郷』って苦手な曲でよく飛ばして聞いてたんだけど、聞いてるうちに「いい曲だな」と思えるようになってきた。あまりに社会的すぎて(しかもマイナーコードだし)いたものでね。コドモには難しい。全体的に「文学的」で、ともすると「内省的」な空気の強いこのアルバムの中で、逆方向に弾けてる『ハワイへ行きたい』は、前作「OLYMPIC」あたりの空気感が出てる曲で、これが『おねがい天国』へとつながってくわけだな。みさっちゃんのコーラスもかなり大きく聞こえるラストの『ジェシオ'S BAR』で大団円のうちにショーは終りです、といった具合で終るかと思いきや、このアルバム、ラストのラストに「1、2、3、4!」という、普通なら曲のイントロ前に入れるかけ声で終る。

このアルバムって、それまで大江千里にあった、どこか文学少年的な匂いをさせてる最後のアルバムなんだよね。「乳房」「AVEC」と強烈にそう言う感覚のアルバムを作ってきた、その集大成なんだろうな、と思う。というか、そう言う意味でも、ぼくとしては、このアルバムがひとつの頂点だと思ってる。(厳密に言うと、このすぐ後に出したシングル「これから」が頂点)ああ、実際このアルバムの後に「Sloppy Joe」ってセレクションアルバム出して、確実に一区切りつけてるんだった。ちなみに、「Rain」はこの「Sloppy Joe」にも収録されてるんだけど、ぼくは「1234」収録の、ガンガンにリバーブの聞いたバージョンの方が好き。(ちなみに、以降のベストアルバムにはたいてい「Sloppy Joe」のテイクが採用されてる)
で、この後のアルバム「red monkey yellow fish」は「OLYMPIC」の流れから、それをさらに突き抜けちゃった感じになって行くのね。ま、そっちの路線も「Giant Steps」でまたがらっと変わったりするわけだけど。それはまた別の話。

そんなわけで、今でもぼくの「マイフェイバリットアルバム ベスト5」に入ってるアルバムです。


http://www.senrioe.com/


BREATH/渡辺美里 [勝手にディスクレビュー]

毎度、ライブを見たあとにディスクレビュー。別にそうと決めてるわけではないんだけど。

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渡辺美里「BREATH」
1987年7月15日発売 ESCB1163(32・8H-130)

みさっちゃんのアルバムの中でいちばん好きなアルバムと言うのが、この3rdAlbum「BREATH」『My Revolution』収録の「Lovin' you」と、『センチメンタル カンガルー』などが収録された「ribbon」の間に出てるアルバムで、わりと通好みなアルバムかもしれない。後にSPEEDのプロデューサーとして名を轟かせることになる伊秩弘将氏はこのアルバムからの先行シングル『IT'S TOUGH』にて作曲家デビューなんですね。
アルバム全体が、かなり尖った感じの曲が多いので、以前のライブなんかでは結構選曲されてたんだけど、最近のライブではあまりここからの曲が選ばれることは少ないです。作曲家陣は、先述の伊秩弘将が3曲、佐橋佳幸が3曲、小室哲哉が2曲、木根尚登が1曲、ご本人が2曲(うち1曲は佐橋くんとの共作)、なお作詞は初めての本人全曲作詞。
パワーみなぎる!といった感じの『IT'S TOUGH』はこの前の西武でもメドレーの中で歌われてたけど、92年の西武で歌われたアレンジも、2000年のツアー「うたの木FRAGILE」でオープニングに持って来たノイズまじりのギターゴリおしのアレンジも、どんな味付けにしてもロック魂炸裂なかっこいい曲。『MILK HALLでおあいしましょう』という、この「MILK HALL」というのは、実は彼女の出身校(松原高校)の向かいにある夏季限定のかき氷屋さんのこと、というのは知られたトリビア。今でもやってます。オーケストラのバックに歌を乗せたタイトル曲『BREATH』は、非常にドラマチックできれい。7分以上あるのにそう感じさせない、もしくは逆にものすごい大曲を聞き終わった感じにさせてくれる、そんな曲。発売された当時はよくピアノのある部屋で、この曲を大音量でかけながらそれにあわせてピアノを弾いて楽しんだものです(これがほんとに気持ち良い)。『BORN TO SKIP』は、詞に漂う傍観者っぷりがかなり好きな曲。それにしても、木根さんの曲にはほんとにはずれがないね。『HERE COMES THE SUN』はウツの声もがんがん入って、初期TMの匂いたっぷり。
ちなみに、ぼくがいちばん好きな曲『RICHじゃなくても』はスウィングジャズの一品。ホーンセクションがなんとも気持ちいいのだが、こういったジャジーな曲と言うのはこれ以前もこれ以降も全然作ってないのね。ものすごくあうと思うんだけど。特に今の年齢になってますますぴったり来ると思うんだけど、また作ってくれないかなあ、こう言う曲を。

最後にひとつ。
ぼくは今までコンサートで自分でも思わぬところでいきなり涙が込み上げて来た、と言う経験が2回あるんだけど、そのひとつがここに収録されてる『PAJAMA TIME』と言う曲。
1999年に、初めてオーケストラを従えた「うたの木ー春(冬)の華ー」というコンサートがあったんだけど、この時に『PAJAMA TIME』が選曲されててね。で、一緒に口ずさんでたんだけど、曲の大サビの
 「この河の流れが速すぎて 泳げない時は
  この河の幅が広すぎて 渡れない時は
  この河を飛べる大きな翼 今はないから
  こぎ出せるボートをください」
というフレーズのあとで、突然グアーッと込み上げて来て、いきなり号泣。
こんなの初めてだったもんで自分でもびっくりした。もともと好きな曲だったけど、その事件以降、なんだか聞き流せない曲になりました。

それにしても、この人の作家陣は本当にすごいよね。小室哲哉といい、伊秩弘将といい。このアルバムにはいないけど大江千里といい、岡村靖幸しかり。一時期は小林武史も絡んでるしね。
さらにすごいところは、この人たちをここでビッグネームに押し上げてるってことだよね。一時期、駆け出しの作曲家はみんな渡辺美里に書きたがっていた、って話もあるくらいだからねえ。

そんなぼくの夢のひとつに、自分の曲をみさっちゃんに歌ってもらう、というのがあります。
いつか、実現させましょう。

http://www.misatowatanabe.com/
(オフィシャルのディスコグラフィのBREATHの写真、左右逆になってる!)


heartbeat/坂本龍一 [勝手にディスクレビュー]

久しぶりに登場の「勝手にディスクレビュー」。先週ライブを見て来た坂本龍一から1枚まいりましょうかね。

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坂本龍一「heartbeat」
1991年10月21日発売 VJCP30093

なにげに「マニア」な領域まで踏み込んで聞いてるような節もある坂本龍一の中で、アルバムとしていちばん好きなのがこの「heartbeat」です。 坂本龍一と言えば、まあYMOでの活躍から「戦場のメリークリスマス」「ラストエンペラー」と映画音楽まで大成して一躍「世界のサカモト」となっていったわけですね。 で、初期のソロや、YMO散開後のアルバムなんかではかなり打ち込み多様のテクノ色も出てたのですが、おそらく「ラストエンペラー」以降、あまりそういうものを作らなくなってったんですね。 沖縄音楽に傾倒してったりとか。 そんな中で、この「heartbeat」では当時流行り出してた「ハウス」の手法を思いきり使って作られたアルバムで、サカモト的打ち込みの気持ち良さがかなり全面的に出たアルバムなのです。 サトシトミイエとかテイトウワがサカモトと絡み出したのがここからですね。 ぼくはこの人のこういう打ち込み感が非常に好きで。 もちろん「ラストエンペラー」とか『El Mar Meditirrani』といったオーケストレーションのすごいものとか、ハーモニーが好きなものは他にもたくさんあるわけですが、もっとこういう打ち込み多様のものも作ってほしいな、と思うわけです。 自身の作品以外では、薬師丸ひろ子に書いた『二人の宇宙』とか中森明菜の『NOT CRAZY TO ME』、中谷美紀の『天国より野蛮』なんていう気持ち良い打ち込みやってるんですけどね。もっと自分の曲でやってくれ、と。

このアルバムの中でも飛び抜けて気持ちいいのが『triste』かな。 きもちJazzyなトラックに自らのピアノを切り張りしてのせてる、と言う感じのもので、このコード感がたまらなくかっこいいわけですよ。 全編的に入ってるラップやミュートトランペット、後半で絡んでくるストリングスのフレーズも相まってものすごくJazzyでGroovyで。もう聞きながら体が揺れてくる気持ち良さ。
関係ないけど、この曲のコード展開と、最近Sketch Showとやった『Beautiful to me』と言う曲のコード展開は兄弟だと思う。

他にもかなり意図的に「踊れる」曲に仕立てた表題曲『Heartbeat』やワルツの『LuLu』、後に映画「HIGH HEELS」のテーマとなる『Song Lines』、ミニマル的なトラックにアフリカの民族的な歌をのせた『Bolom Gal』、アンビエントにきれいな『Epilogue』など、ここちよい曲が並んでます。ヘタウマギリギリの線とも言われるご本人歌唱の『High Tide』『Sayonara』もアクセント。前の会社で一緒だった子は「もう、教授のあのつたないヘタウマな歌がたまらなく好き!」と言ってたな。わかる気もする。

このアルバムの後で、「POPSとはどう言うものなのか、を考えて作った」という「sweet revenge」「SMOOCHY」と言うアルバムを出したわけだけど、その2枚よりも、この「heartbeat」の方がよほどPOPSだと、ぼくは思いますね。

ちなみに、ぼくが意識的に坂本龍一を聞いたのは小学校6年生の時。 『Steppin' into Asia』というシングルを借りて聞いたのが多分最初ですね。 この人の、いわゆるレア音源というやつは、全部そろえようとするとおそらく天文学的な費用がかかると思うんだけど、そこまで行かない範囲では結構そろえてると思うんだよね。 「Life in Japan」は基本として、「The Fantasy of Light & Life」「GRAN TURISMO」「BEAUTY REMIX」とか。「YOU DO ME」の海外版シングルとかね。とりあえず「Compute,Compute,Compute」「TOKIO KUMAGAI」「Heart of Asia」辺りを持ってる人がいたら、ぜひ一度聞かせていただきたい。
(この辺、わからない人には全くわからないと思いますが、そう言う方はすっ飛ばして下さい)
http://www.sitesakamoto.com/


Lush Life/川村結花 [勝手にディスクレビュー]

今日は約半年ぶりの、川村結花のピアノナイトだった。
自慢じゃないが、このピアノナイト、今回で11回目(十一夜)なんだけど、第1回から逃してないのですね。そのくらいこの人の弾き語りライブは魅力的なのです。
ということで、川村結花からディスクレビュー。

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川村結花「Lush Life」
1999年4月1日発売
ESCB1954

EPICに移籍して、立て続けに4枚のシングルを出した後に発表されたアルバム。この4枚のシングルがどれも良い作品だっただけに期待大で聞いたこのアルバム。名盤。ものすごく名盤。本当に「ガツン」とやられたくらいの衝撃があった。一気に「マイベストアルバム ベスト5」にわりこんできた。

何かに書かれてたんだけど、ボーカルの熱さを乗せるために、あえてバックトラックは温度を下げた感じに仕上げた、とか。なるほど、といった具合。特にリズムトラックは淡々とすすむ感じで、しかしそれに生楽器が絡んで来て、程よいクールさ。そこに乗る歌。 この人の特徴はその独特なコード感。そして思いきり「せつなくなる」言葉。全部の言葉を自分で書いてるわけじゃないのにトーンがきれいに統一されてて、そしてせつない。アルバムのコピーになってる「あったか、さみしい。」「至極名曲、感涙必死」と言うのが、ほんとそのまま。 実は、この人の歌を初めて聴いた時に、「こんなに、自分とコード感が似てる人がいたとは!」って思ったのね。かわむら好きの人に言わせたら「何をお前は勝手なことを!」て怒られるかもしれないけど。でも、すごく近いものを感じてね。それだけに、聴いててものすごく気持ちよい。ライブのアレンジで、曲間のつなぎなんかに弾いてる中で、ぼくが「こう行ったらいいな(オレならこう行かせるな)」って思うコード進行と同じ進行で何小節も行ったりすることが実はかなり多くて。(それは決して「よくある」コード展開ではないんだけどね)ほんとに、メロディをとっても言葉をとっても、ツボにはまります。そしてこのピアノ。これだけ気持ちよさそうに弾きたいものですよ

どのアルバムも好きなんだけど、それでもこのアルバムを初めて聴いた時の衝撃が強いですからね。まずこれをすすめます。このなかの『イノセンス』をぜひ聴いてもらいたい。ぼくの中で「出会ってしまったソングベスト3」の頂点にいます。ちなみに後の2曲は鈴木祥子の(というかキョンキョンの)『優しい雨』、そして僭越ながらSunny Funnyの『はね』と言う曲です。 他にも、アルバム冒頭から「ぼくらはどこへ忘れて来たんだろう/つよく愛するそのちからを」と歌い出す『マイルストーン』やCMでもよく流れてた『遠い星と近くの君』(YO-KING作詞)、スカパラ谷中のバリトンサックスとピアノだけの大人ムードな『Rum & Milk』、シングルになってたそれぞれ名曲の『ヒマワリ』『home』『Every Breath You Take』など、名曲満載。コーラのCMだった『ときめきのリズム』のアルバムアレンジや、いちばん有名どころとしては『夜空ノムコウ』のセルフカバーとかもあり。友人の1人は「このアルバム聴いて何も感じない人とは仲良くなれないと思う」とまで言いましたが、まあそれは別にしても、一度は聴いておいてみてもらいたい名盤でございます。

ちなみにこの川村さん。ライブではべたべたの関西人でなかなかぶっ飛んでます。ピアノ弾き語りで突然、八代亜紀の『舟歌』やってみたり、カルロスくんの『アクアマリンのままでいて』とかやったりして。一昨年のライブで、突然「あ!今日日曜日だ!どうしよう「利家とまつ」ビデオセットしてくるの忘れたわ。だれか録ってない?」と言い出してみたり。その辺はHPのDiary見ててもわかりますけどね。

今日のライブはプラネタリウムホール、というすてきな場所だったんだけど、1曲目で星を映しながら『星になるまで』って泣ける歌を歌いまして。しょっぱなから号泣モード全開でしたわ。中盤で街の夜景と星を映して『bound』という疾走感溢れる曲(「星をーおいこしてー」って歌)をやった時も気持ち良かったですねえ。 そう、この人の歌はCDで聴いてももちろんいいけど、生で、ピアノ1本で聴くとこれまたグッと来ますよ。お近くでライブがある時は1回見ておくことも、あわせてすすめます。 ていうか、ピアノナイトのライブ音源とか映像とか、パッケージにして出してくれればいいのに。

http://www.kawamurayuka.com/


Hourglass/鈴木祥子 [勝手にディスクレビュー]

前回から予想以上に早い再登場、「勝手にディスクレビュー」。
最初は、ぼくの人生の中でのBEST5から行こうかな、と思ってたんだけど、今日ライブを見て来て、そのライブがとてもよかったので鈴木祥子から1枚。
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鈴木祥子「Hourglass」
1991年12月1日発売

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この人は非常に浮き沈みの激しい人で。アルバムの順番を知らずに聞くと、同じ人の音楽とは思えないくらい(っていうとちょっとオーバーだけど)曲層の違う音楽だったりする。
デビューから4枚はわりとおだやかなアコースティック目のアルバムが続いて、5枚目がぐっと(病的なまでに)内向的なアルバムになる。今回ぼくがあげた「Hourglass」がその5枚目。このあとの「Radio Genic」と言うアルバムで明るめのポップに浮かび直し、次の「SNAPSHOTS」と言うアルバムでは驚くほど荒々しいロックになり、さらに次の「Candy Apple Red」もその路線を引き継ぐ。
レコード会社を移籍して「私小説」「あたらしい愛の詩」ではある種自虐的なことばで自制的なロックを歌い、「Love, Painful Love」というアルバムでは全楽器の演奏を自分で行うという荒技ながら「鈴木祥子」以外に考えられない音楽を作る。

というわけで、今回紹介する「Hourglass」。自身でも言ってるように「内向的な」アルバム。
なので、初めて鈴木祥子を聞く、と言う人にはまず勧めないアルバム。鈴木祥子をあまり知らないと言う人は、1-4枚目から選曲のベスト盤「Harvest」と5-8枚目から選曲の「あたしの旅路」というベスト盤から入って下さい。
それで「この人の音楽が好きだな」と思ったら「Hourglass」を聞いて見て下さい。それはそれは心地いい音楽が待ってます。
1曲目の『Sweet Thing』という歌が、ぼくはこの人の歌の中でも1,2を争うくらい好きなのですが、楽曲的には1つのコードの流れを延々繰り返す中に盛り上がりが生じてくると言う、ある意味ボレロ的な作り。情景描写の続くことばに、不思議と映像が見える感じがしてくる。ほんとに気持ちの良い曲。タイトル曲の『Hourglass』は3拍子のリズムがまた気持ちよい。音もすごく素朴な音なんだけど、泣きたくなるくらい懐かしい感じ。シングルでも出てた『Happiness』は、シングルよりも簡素なアレンジ。ぼくはシングルのアレンジの方が好きだけど、これまたすごく好きな歌で。「ねえ誰か教えてよ/大事なものはなぜいつもなくなるの」って歌なんだけど、ことばもメロディもすごく好き。って、「好きだ」ってしか言ってないよな。アルバム中唯一おだやかな幸せを歌う『とどくかしら』はきいててほんわかしてくるし。おだやかながらアルバムのアクセント。アクセントにはもう1曲、この人のオリジナルでは珍しい、詞も曲も自分以外が作ってる『Love Child』。リズミカルなアコースティックでこじんまりセッションを楽しんでる感じ、かな。
ま、とにかくですね、おだやかな音楽なんですよ。鈴木祥子の音楽は本当にどれも好きでそれぞれに言いたいことがたくさんあるんだけど、「アルバムで1枚」って言ったら、ぼくにはこのアルバムですね。
ちなみに今日のライブではこのアルバムから『Happiness』『言葉』『とどくかしら』と3曲もやってくれまして、とてもうれしかったです。(何の曲聞いてもうれしいくせに)

ええ、重ねて。
鈴木祥子をあまり聞いてない人は、いきなりこのアルバムに入らないように気をつけて下さい。

http://syokosuzuki.sakura.ne.jp/


TOKYOMAN/KAN [勝手にディスクレビュー]

たまには、勝手にディスクレビューなんて。
まずはやっぱり、いちばん好きなミュージシャンからいってみましょうかね。
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KAN「TOKYOMAN」
1993年2月25日発売

ぼくがKAN好きであることは、改めて言わずとも「曲聞けば何となくわかるよね」とまで言われるわけでして。バンドでやってる時はそれほどでもないかな。でも『はね』て曲にはKANの要素がたっぷり入ってますね。はい。
そんなKANさんのアルバムです。今、発売日を見て気が付いたんだけど、これぼくの大学受験真っ最中に発売されてるのな。
実はこのアルバムが出るちょっと前は少しだけKANからはなれてたんだよね。
ちょうど「めずらしい人生」てベスト盤が出た後で。浪人中ってのもあったのかな。
で、92年の終わり頃に『死ぬまで君を離さない』ってシングルが出たんだけど、これも買って一度聞いてそれきり、て感じだったのね。それよりもc/wの『KANのChristmas Song』の方をよくきいてて。それが、年明けてふと『死ぬまで君を離さない』をまた聞いた時に、もう胸の奥ぎゅーっとやられるくらいに衝撃受けて。「何で最初に聞いた時に何も感じなかったんだろう」て不思議なくらい。
で満を持してのアルバム。これが本気でいいアルバムでね。曲をとっても言葉をとってもすばらしい。曲調もかなりいろんなことやってて。ボサノバの『香港SAYONARA』、フロア向け『孔雀』大バラード『死ぬまで君を離さない』、アカペラの『Christmas Song』。シングルのc/wとして発売されてたバラード『Day By Day』はリアレンジされてボーカルテイクも違うものとなり、「あー、これもこんなにいいうただったんだな」と再確認。
中でも『まゆみ』は大本命の名曲ですね。のちにシングルカットされてサイダーのCMに使われたりしたので知ってる人も多いですが。曲の構成がほんとにすごいです。アコースティックに始まってサビでぐっと転調してストリングスまで入って盛り上がり、エンディング手前でまた静かに戻る、と。その時の歌詞が秀逸です。
  一番澄き透ってて美しい水って 何か知ってるかい
  恋をして せつなくて がまんしてがまんして こぼれた涙がきっとそうだよ

かないません。この人の書くことばにはもう。脱帽です。
こんなことば書いてるのに、ほんっとにふざけたことばも書いたりするからね。
このアルバムじゃないけど、彼女の二の腕さして「ニーノ」って連呼したりするからね。

ま、とにかく、これは一家に1枚位の名盤だと思うんだけど、悲しいことに中古屋行くと安く売られてるんだよね。もし、まだ聞いたことない、と言う人。安くてもいいので買って聞いてみて下さいませ。名盤ですから。

ちなみに、KANで「この1曲!」と言ったら、それは「HAPPY TITLE」と言うアルバムの最後に入ってる『東京ライフ』と言う曲です。本当に素朴な曲なんだけど、ぼくにとっては神の存在のような曲です。
http://www.kimuraKAN.com/


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